Research Highlights

受容体と作動体

Nature Reviews Cancer

2004年8月1日

非Hodgkin B細胞リンパ腫に効果がある治療法は、患者のB細胞を枯渇させることを目的としたものである。しかし、ヒト化免疫グロブリンG1 (IgG1)抗体療法薬、リツキシマブがB細胞を死滅させる正確な機序は、これまで知られていなかった。Jungi Uchidaらは現在、この機序を解明している。

リツキシマブは、B細胞特異的抗体CD20を標的とするもので、抗体、エフェクター細胞(マクロファージおよびNK細胞)、補体依存性細胞傷害といった免疫応答のさまざまな側面、CD20シグナル伝達経路の途絶およびアポトーシス誘導に影響を及ぼす。これまでは、in vitroまたは循環中のヒトB細胞における機序にのみ目が向けられてきた。そこでUchidaらは、マウスモデルを作製して、マウスの抗マウスCD20モノクローナル抗体(mAb)12種を用いて抗CD20免疫療法を実施し、考えられる機序をひとつひとつ検証していった。上記抗体はいずれもCD20野生型マウスのB 細胞と結合し、循環中および脾内双方のB細胞コンパートメントが激減した。mAbがB細胞を枯渇させる効力は、そのイソタイプと密接に相関しており、 IgG2a mAb (MB20-11)の単回投与により、血中B細胞が95%超、脾内B細胞が93%超の減少を遂げた。いずれの抗体も、Cd20-/-マウスに何ら影響を及ぼすことはなかった。

免疫エフェクター細胞が発現するIgGのFc受容体クラスは3種あるが、 Fc RIの親和性が最も高く、これとIgGとの結合が引き金となって、マクロファージによる食作用およびNK細胞による細胞傷害作用が起こる。Fc RIまたはFc RIIIのいずれが欠失しているマウスにMB20-11を投与するとB細胞は激減したが、Fc RIおよびFc RIIIの双方が欠失しているマウスに投与しても、B細胞は激減しなかった。このことから、上記受容体のひとつと結合することが、抗CD20 mAbの有効性にとって重要であることがわかる。Uchidaらは次に、補体欠損マウスを検討し、抗CD20 mAbによるB細胞枯渇で補体が果たす役割を評価した。in vitroでは、補体の存在下でのみ抗体によるB細胞溶解およびアポトーシスが起きた。しかしin vivoでは、mAbがB細胞を死滅させる能力に、野生型マウスおよび補体ノックアウトマウス間の差はみられなかった。

このことから、Fc受容体は抗CD20 mAbの有効性にきわめて重要であるが、この反応のエフェクターは何だろうか。T細胞またはNK細胞がないマウスをMB20-11で治療すると、B細胞が 96%超も減少した。しかし、マクロファージ欠損マウスを同じ方法で治療しても、循環中および脾内のB細胞が大幅に減少することはなかった。

Uchidaらは結論として、抗CD20 mAbによるB細胞枯渇機序は、Fc Rを介して生じるmAbでコーティングしたB細胞のマクロファージによる食作用である可能性が高いとしている。この知見から、リツキシマブ療法に対する反応および抵抗性と、非Hodgkinリンパ腫治療の効果を上手く増強する方法の開発について、理解が深まるはずである。

doi:10.1038/nrc1420

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