Research Highlights

くっついてる?twistしてる?

Nature Reviews Cancer

2004年8月1日

転移癌細胞および胚性幹細胞の遊走性が類似していることは、以前から注目されていた。Weinbergらは最近のCellで、上皮由来乳癌の転移には、TWIST (上皮-間葉転換(EMT)をコントロールするマスター遺伝子)が必要であると報告している。

Weinbergらはこれまで、転移特性が明らかに異なる自然発症マウスの乳癌細胞系4株を用いる乳癌モデルを利用してきた。この4株には、転移性がないものから、転移性の高いものまである。各細胞系からin vivoで生じる原発性乳癌のマイクロアレイ発現プロフィールを比較することにより、転移性が高くなるにつれて発現パターンが変わる遺伝子を特定した。また、転移腫瘍と非転移腫瘍とを比較することによって、マトリックスメタロプロテイナーゼ9をコードする遺伝子など、転移に関与していることがわかっている遺伝子を同定したほか、二番目によくアップレギュレートされる遺伝子としてTwist をも単離している。

Weinbergらは、このマウスモデルにおけるTwistの転移への寄与を検討するため、siRNAを用いて最も転移性の高い細胞系のTwist発現を抑制した。Twistを抑制しても、原発性乳癌の形成には影響がみられなかったが、細胞が血管に入る能力と、肺内に微小転移を成立させる能力が共に阻害され、転移が大幅に抑制された。

Twistは細胞の転移能にどう影響するのだろうか。TWISTは、進化的に保存された転写因子で、胚発生時の組織再構成を調節するうえに、細胞を遊走させる。Weinbergらはこのため、Twist がヒト乳腺上皮細胞に遊走性を与えるのではないかという疑問を提起した。Twistを発現する細胞は紡錘状の線維芽細胞形態となり、細胞間接触が減少していたが、これはEカドヘリンや -カテニンといった接着結合タンパク質の発現が抑えられたことに関連している。このような形態の変化は、EMTを来たしている細胞の特徴の一つで、遊走性と密接な関わりがある。

TWISTはヒト乳癌に関与しているのだろうか。Weinbergらは、ヒト乳癌の転移性細胞系と非転移性細胞系でTWIST発現レベルを比較し、転移細胞系のみがTwistを発現することを明らかにした。さらに、乳癌の特異的サブタイプ(乳管癌、乳管/小葉癌および小葉癌)を対象に、TWIST発現のマイクアレイ分析を実施したところ、小葉癌の70%が高レベルでTWISTを発現することが明らかになった。興味深いことに、小葉癌にはEMT細胞の証拠が多く、これを糸口にこの癌におけるEカドヘリンmRNA発現を検討したところ、その値はかなり低かった。以上の所見は、小葉癌が急速進行性かつ浸潤性であることと相関している。

TWISTはこのほか、やはり浸潤性増殖が認められ、Eカドヘリン値が低いびまん性胃癌でも過剰発現している。このことからWeinbergらは、Eカドヘリン発現は TWISTによって直接抑制されており、これが、TWISTによる腫瘍の浸潤性増殖を助長する機序ではないかと考えている。

doi:10.1038/nrc1417

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