Research Highlights

薬物抵抗性のABC

Nature Reviews Cancer

2004年10月1日

癌細胞から種々抗癌剤を活発に排出する膜輸送体のABC (ATP結合カセット)ファミリーメンバーの活動によって生じる多剤耐性は、効果的な癌化学療法に対する大きな障壁である。しかし、ABC輸送体ファミリーメンバーにはあまりよくわかっていないものが多く、この問題を克服する障害となってきた。Cancer Cell最新号での報告では、Szakacsらが癌細胞に存するヒトABC輸送体すべての発現データと種々抗癌剤に対する細胞の感受性に関する情報とを結びつけており、こうしたタンパク質を介する薬物耐性についての理解を深めるのに有用な手段をもたらしている。

ヒトABC輸送体48個のうち、抗癌剤抵抗性に関連するものは原型的な多剤輸送体ABCB1 (MDR1およびP糖タンパクでも知られる)など、わずか10個であった。しかし、上記ABC 輸送体間の配列類似性は高く、ほかのメンバーが抗癌剤を排出する可能性もあることがわかる。そこでGottesman研究所のSzakacsと Annereauは、Weinsteinグループと共同で、多くの化合物に対する反応が十分にわかっている一連の癌細胞、すなわち100,000を超える化合物のスクリーニングに用いられた米国立癌研究所の癌細胞系60株のパネルにおけるABC輸送体発現の特徴を明らかにすることによって、この可能性を探ることに着手した。

ヒトABC輸送体全48個のメッセンジャーRNAレベルの定量に、マイクロアレイよりも特異度および感度が高いリアルタイムPCRアッセイを用いることにより、癌細胞系60株すべてにおいて、ABC輸送体発現と化合物1,429種に関する既知の薬物活性パターンとの間に明確な相関関係が得られた。予想通り、ABCB1の発現と、この輸送体の基質として知られる抗癌剤に対する細胞感度の低下とはよく一致していた。さらに、この方法を用いることで、これまでABCB1の基質とはわかっていなかった化合物数種にこの輸送体の基質である可能性が見出され、追跡実験によりその予想が裏付けられた。なお、意外にも、こうした化合物の中には、ABCB1によって(打ち消されるのではなく)強化される抗癌活性を有すると見込まれた(後にそのことが裏付けられた)ものがいくつかあり、薬剤開発の手がかりとなるのでは、と考えられた。

以上をまとめると、上のデータから、輸送体発現が薬物抵抗性と相関する薬物-輸送体 131対が明らかになった。薬物抵抗性に関連することがわかっている輸送体のほか、以前には薬物抵抗性への関わりが示されていなかった輸送体もいくつか同定された。ここでも、追跡実験により予想の一部が裏付けられた。

全体として、SzakacsとAnnereau が創出したデータベースは、発現によって薬物抵抗性を生じる輸送体のほか、輸送体発現で作用が打ち消されたり、影響を受けなかったり、逆に強化されたりする化合物を同定する情報源となるもので、多剤抵抗性という問題に取り組む戦略を考案するのに有用となる。このデータベースはまた、今後のデータマイニングにも有用で、よくわかっていない多くのABC輸送体の機能に関する研究に役立つであろう。

doi:10.1038/nrc1469

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