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早々にマークしますか?

Nature Reviews Cancer

2004年11月1日

臨床症状の発現が遅く、通常、診断時には比較的進行している卵巣癌患者にとって、早期発見は重要である。Ibanez de Caceresらは、早期癌のマーカーを特定しようと、いくつかの腫瘍抑制遺伝子のメチル化パターンを評価した。

腫瘍細胞においては多くの遺伝子が過剰にメチル化することがわかっており、生検組織から直接ではなく、体液から単離した細胞によって肺癌、頭頚部癌、乳癌および膀胱癌の患者を特定するのに上手く利用されている。これが可能であるのは、感度の高い(非メチル化アレル1,000個につきメチル化アレル1個)メチル化特異的PCR法により、メチル化した遺伝子を検出することができるためである。

Ibanez de Caceresらは、この方法を用いて、腫瘍組織から単離したDNAの腫瘍抑制遺伝子BRCA1およびRASSF1Aのメチル化状態を明らかにし、卵巣腫瘍または原発性腹膜腫瘍50検体の血清および腹膜液と対応させた。腫瘍組織から直接単離したDNA試料では、その68% に上記両遺伝子のいずれかまたは両方の過剰メチル化が認められた。Ibanez de Caceres らがさらに、ほかの腫瘍抑制遺伝子[APC, CDKN2A (INK4AおよびARFをコードする)およびDAPK] を分析したところ、全50検体の過剰メチル化アレルの検出率が増大した。保管されたI期腫瘍の21検体を同じく分析したところ、上記6遺伝子のうち少なくともひとつのメチル化レベルが検出可能な検体は、全体の95%にのぼり、過剰メチル化は早期癌のマーカーであることが裏付けられた。対応させた血清の 82%および腹膜液DNAの93%には、腫瘍DNAに認められたものと同一のメチル化パターンが見られたことから、この方法を用いれば腫瘍の生検試料ではなく、体液を分析できることが明らかになった。なお重要なことに、過剰メチル化は、良性卵巣疾患患者10例の血清ならびに腹膜液DNAからも、年齢をマッチさせた対照20例の血清DNAからも、検出されていない。

Ibanez de Caceres らは、血清DNAを用いて上記遺伝子のメチル化パターンを分析すれば、特異度100%、選択度82%で卵巣癌患者を特定できると結論づけている。この方法の感度を改善すれば、DNA過剰メチル化分析が早期卵巣癌患者を特定する非侵襲的方法として発展する可能性がある。

doi:10.1038/nrc1482

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