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腫瘍形成におけるネトリン1とその受容体

Nature Reviews Cancer

2004年12月1日

Visualizing axon guidance phenotypes induced by RNAi in chicken embryos

抄録

ネトリン1とその受容体DCC (deleted in colorectal cancer)およびUNC5オーソログ(ヒトUNC5A-Dおよぴげっ歯類UNC5H1?4)は、アポトーシスを正(誘導)にも負(抑制)にも調節する新しい機序の特徴をなすものである。ヒト癌については、正のシグナル伝達経路が頻繁に不活化されることを示す証拠が集まっている。なんと、ネトリン1はその受容体と結合することによって腫瘍抑制因子p53に依存するアポトーシスを阻害し、p53がネトリン1とその受容体の転写調節に直接関与していたのである。すなわち、腫瘍形成においては、ネトリン1受容体経路が重要な役割を果たしているものと思われる。

要約

・ 種々ヒト癌では軸索誘導分子が頻繁に不活化される。特に、ネトリン1受容体DCCおよびUNC5Hファミリーは、大腸癌全体の半分以上においてダウンレギュレートされている。

・ DCCおよびUNC5Hタンパク質は、ネトリン1の不在下では正に、ネトリン1の存在下では負にアポトーシスを調節する。これは、「依存受容体」の考え方である。

・ DCCによって誘導されるアポトーシスは、新規アポトーシス経路の特徴であり、カスパーゼ活性化には依存しているが、ミトコンドリア受容体および細胞死受容体を介するアポトーシス経路のいずれからも独立している。

・ ネトリン1を介する抗アポトーシスシグナルはp53によって誘導されるアポトーシスを阻害するが、これはNTN1 (ネトリン1をコードする)が腫瘍遺伝子として機能しうることを意味している。

・ 正常大腸上皮におけるネトリン1の勾配ははっきりとしており、陰窩での発現が最多、絨毛上部が最少であり、この組織における細胞の生死と相関している。

・ NTN1トランスジェニックマウスは腸上皮細胞のアポトーシスが少なく、これが過形成および腺腫の自然形成の増大につながっている。

・ 腫瘍抑制因子p53は、ネトリン1とその受容体の一部の発現を調節する。このため、p53はネトリン1経路の調節を通じて細胞の運命を決定するものと思われる。

doi:10.1038/fake840

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