Research Highlights

Xがそこに印をつける

Nature Reviews Cancer

2004年12月1日

癌に対する感受性は、先天異常、進行性骨髄不全およびDNA架橋剤に対する過敏症を引き起こす常染色体劣性疾患、Fanconi貧血(FA)の重大な帰結のひとつである。この疾患の原因となる欠陥タンパク質のいくつかは通常、DNA損傷の修復に関与しており、新たに報告されたFA関連ポリペプチド (FAAP95、Hans Joenjeらが同定)も例外ではない。FAAP95をコードする遺伝子が、以前はBRCA2と関係があると考えられていた相補グループB (FA-B)を生じることは予想外である。さらに、FAAP95をコードする遺伝子がX連鎖であることから、欠陥遺伝子の保因者に対する深い意味がもたらされ、散発性癌に関する新たな見通しが得られた。

この研究者らは、DNA架橋の修復に関与する重要なタンパク質、FANCD2のモノユビキチン化の原因となるFAの「コア複合体」の成分を分析することによって、FAAP95を同定した。さらに、FAAP95が激減するとモノユビキチン化FANCD2産生量が低下することがわかったことから、この研究チームは、FAAP95をコードする遺伝子がFAの原因のひとつであるかどうかを詳しく調べた。FAAP95のアミノ酸配列が得られ、データベース検索により、これをコードする遺伝子がX染色体上にあることがわかった。同研究者らはそこで、罹患者全員がモノユビキチン化に欠陥のある男性のFA相補グループを探した。同定した相補グループ11個のうち、この基準を満たした相補グループはただひとつ、FA-Bであった。FA-B患者について、FAAP95をコードする領域の配列を解読したところ、早期停止コドンを引き起こすフレームシフト突然変異を発見した。さらに、FA-Bリンパ芽球に、野生型FAAP95をコードするcDNAを移入したところ、モノユビキチン化をはじめとする表現型は正常に戻っていることがわかり、FA-B患者はFAAP95に異常があることが確認された。この遺伝子はこのため、FANCBと名づけられた。

FAのX連鎖遺伝はまだ報告されていないたことから、研究者らはただちにFA-B患者の母親および祖母が変異FANCBの保因者であるかどうかを検査した。女性の保因者が特定されたが、この変異をもたないと見られる患者の母親もいたのが驚きであった。この家系を対象に、FANCBのメチル化状態を検査したところ、実際に、変異FANCB がX染色体の不活化を受けやすい(2本のX染色体のいずれかにあるほとんどの遺伝子は、早期胚発生時には転写が抑制されている)ことを突き止めた。発生時には、変異FANCB が不活性な正常細胞が変異コピーを発現する細胞を打ち負かし、そのために保因者のほとんどの組織においてFANCBが正常となるのではないかと考えられる。

とはいえ、保因者にFA様組織を有する可能性があるということは、みかけは健康でもX連鎖FA患者の近親者に悪性腫瘍リスクがあるということで、FANCB 保因者を対象とした癌のモニタリングの重要性が力説されている。さらに、一般集団の一部の癌は、FA経路の体細胞性不活化を原因としている。この研究者らは、X連鎖FANCBが、体細胞における自然変異率にからむFA?BRCA DNA損傷経路のなかでも特に傷つきやすい成分であると警告している。

doi:10.1038/nrc1513

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