Research Highlights

揺らぐ天秤

Nature Reviews Cancer

2005年4月1日

これまで、癌には正常な刷り込みパターンの破壊が関与するとされてきた。たとえば、よくみられる癌のいくつかには、インスリン様増殖因子2 (IGF2)遺伝子座での刷り込み喪失(LOI)が見受けられ、IGF2にLOIを有する集団の10%は、大腸癌の発生リスクが通常よりも高い。Andrew Feinbergらは最近の報告で、IGF2への後成的変化が腸管腫瘍形成を助長すること、未分化細胞へ移行するという運命が、腫瘍発生速度の増大に寄与している可能性があることを明らかにしている。

Feinbergらは、IGF2 遺伝子座での後成的変化がどのようにして腸管の腫瘍形成を引き起こすのかを知ろうと、マウスのIgf2刷り込みを調節する示差的メチル化領域(DMR)の欠失を利用して、マウスモデルを作製した。DMRのない雌マウスは、父親からは正常なIgf2の活性コピーを受け継いでいるが、母親からは異常なIgf2の活性コピー(刷り込みなし)を受け継いでいた。この雌マウスと、腺腫性結腸ポリポーシス(Apc)変異雄マウスとを交配させると、その子孫には複数の腸管新生物が生じやすくなった。Feinbergらは、母親のIgf2のコピーを沈静化させたApc変異マウス(LOI(-)マウスと称する)と、Igf2の活性コピーを2つもつApc 変異の同腹子(LOI(+)マウス)とを比較した。

結腸癌におけるIgf2の役割を裏付けるように、LOI(+)マウスは、小腸および結腸に2倍の腫瘍を生じた。しかし、それだけでなく、LOI(+)マウスは腸陰窩 (腸管上皮の重積で、その底部で幹細胞増殖が起こっている) も長いのには興味が引かれる。Feinbergらは、このように腸陰窩が長いのは、分化上皮細胞と未分化上皮細胞との比が変化しているためではないかと考えている。確かに、LOI(+)マウスはLOI(-)マウスよりも、小腸の未分化上皮細胞マーカーのレベルが高かった。IFG2 LOIの患者の腸管上皮でも同様の増加が見られた。

Feinberg らは、この比の変化により、腫瘍の進行速度ではなく、腫瘍発生が増大するのではないかと考えており、それを裏付けるかのように、LOI(+)マウスおよび LOI(-)マウスでは、小型腫瘍と大型腫瘍との比が同じであることを突き止めている。正常組織が低分化状態に変化すると、のちに遺伝子が変性しやすくなる細胞数が増大すると考えられる。今後の研究により、上皮分化とLOIそのもののいずれが、癌リスクの予測因子として好ましいかが明らかになろう。

doi:10.1038/nrc1595

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