Research Highlights

コラーゲン結合

Nature Reviews Cancer

2005年5月1日

遺伝性水疱形成性皮膚疾患(劣性栄養障害型表皮水疱症:RDEB)患者は、表皮内有棘細胞癌(SCC)を発症することが多い。RDRBの原因は VII型コラーゲンの機能欠損にあり、Susana Ortiz-Urdaらは、上記患者におけるSCCの発生が、腫瘍とその微小環境とのVII型コラーゲンを介する相互作用に依存していることを明らかにしている。

面白いことに、RDEB患者の少数のサブグループには浸潤性SCCが決して生じない。Ortiz-Urdaらは、どのRDEB 患者にも同じタンパク質に傷があるのに、SCCになる患者とそうでない患者がいるというのはどういうことかと首をかしげていた。Ortiz-Urdaらはまず、RDEB患者の初代角質細胞の腫瘍形成能を評価した。発癌性RASおよびNF- B阻害因子I B を用いてこの細胞を形質転換し、免疫不全マウスに移植した。非RDEB個体の細胞はこの試験で、SCCと同じ外観の表皮腫瘍を形成した。RDEB患者12 例から採取した角質細胞のうち8例のものからも、腫瘍が増殖したが、残るRDEB患者4例の細胞にはこれがみられず、RDEBには異なる2種類(腫瘍形成性と非腫瘍形成性)があることが確認された。

腫瘍形成性RDEB患者の初代角質細胞はVII型コラーゲンの一部分を発現するが、非腫瘍形成性RDEBサブセットの細胞(RDEBNullとする)はこれを発現しないため、上記の2集団はさらに、VII型コラーゲンの発現によっても区別することができる。しかも、RDEBNull細胞にVII型コラーゲンが発現すると、その腫瘍形成能が復活した。Ortiz-Urdaらは、 RDEBNull細胞にVII型コラーゲンの種々フラグメントを発現させることによって、腫瘍形成を担うタンパク質領域を絞り込んだ。Ortiz- Urdaらが特定した配列(FNC1)は、RDEBNull細胞の腫瘍形成性を復活させ、抗FNC1抗体は正常な初代角質細胞が腫瘍を形成するのを妨げた。

FNC1が影響を及ぼす一連の癌化過程には腫瘍細胞の増殖、生存および/または浸潤があり、Ortiz-Urdaらは各過程を詳しく調べた。FNC1抗体は、腫瘍細胞の分裂を遮断することもアポトーシスの引き金を引くこともなかった。しかし、正常角質細胞の浸潤を停止させ、RDEBNull 細胞の浸潤性を復活させ、さらには、すでに定着している腫瘍の拡大を止めた。

The FNC1配列には、SCCで見いだされるもうひとつの細胞外タンパク質であるラミニン5との結合部位がある。ラミニン5はVII型コラーゲンと物理的に相互作用するが、FNC1抗体がその関係を絶っている。さらに、ラミニン5はFNC1が腫瘍浸潤を助長するのに必要なようで、ラミニン5に対する抗体は、この過程を阻害した。

RDEB個体に存在するFNC1領域が、SCC発症の信頼できる予測因子であるかどうかはまだわからない。しかし、Ortiz-Urdaらは、VII型コラーゲンおよびラミニン5が細胞外因子であることから、この両因子が原理上、抗体などの治療法に感受性を示すのではないか、としている。

doi:10.1038/nrc1615

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