Research Highlights

炎症の傾向

Nature Reviews Cancer

2005年8月1日

炎症性乳癌(IBC)の発生および生存に関する傾向をみる研究では、IBC発生率が1990年代に増大したこと、人種間にみる発生率の差が大きく顕著であることが明らかにされている。

Paul Levineらは、1988年から2000年にかけて診断された乳癌症例について、Surveillance, Epidemiology and End Results (SEER)プログラムのデータを分析した。おそらくはIBC分類基準が異なるため、IBCの推定発生率には大きなばらつきが見られ、非炎症性の局所進行乳癌(LABC)が含まれていた可能性もある。この分析は、IBC臨床および病理学の包括的定義を利用したもので、腫瘍サイズおよび腫瘍の広がりのほか、形態(すなわち、皮膚リンパ管の塞栓形成)に関するSEERコードを用いた。180,224例のうち、IBCに分類されたのは3,648例、LABCに分類されたのは3,636例で、残りは乳腺組織および脂肪に限局した乳癌(米国癌合同委員会の病期分類ではT1−T3に分類される)に分類された。

IBC発生率は、1998−1990年の2.0から1997−1999年の2.5へ25%上昇している。同時期におけるLABCおよび T1−T3乳癌の発生率は低下しているが、これはマンモグラフィーによるスクリーニングのおかげで早期発見が可能になったためではないかとみられる。これに対してIBCは、高い乳腺密度に隠されてしまうびまん性腫瘍であることから、マンモグラフィーで検知することが困難である。IBC発生率は、白人女性 (2.2)よりも黒人女性(3.1)の方が高かった。IBCと診断された女性の生存期間の中央値(2.9年)は、LABC(6.4年)またはT1−T3乳癌(10年超)と診断された女性よりも短かった。また、黒人女性はIBCまたはLABCのいずれであっても、白人女性よりも生存期間が短かった。いくつかの研究グループが現在、IBCの分子プロフィールについて研究しているが、これはIBCの発生率が上昇している理由およびIBCの悪性度が高く、治療不応性である理由を明らかにする一助になると考えられる。

doi:10.1038/nrc1688

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