Research Highlights

形成と機能

Nature Reviews Cancer

2005年9月1日

われわれは、Watson−Crick型のDNAに馴染みがある。それゆえ、DNAが生物学的に適切な別の構造をとりうるという事実を見過ごしがちである。癌遺伝子MYCのプロモーター領域にみるDNA構造の差異が、その転写に影響を及ぼすことはすでに明らかにされている。このDNA領域の構造をMYC転写の低分子阻害因子と合わせて分析することにより、転写ベースの抗癌剤開発について、新たな洞察がもたらされる。 

グアニンテトラッド3層(黄色の四角)を伴い、4本の鎖が平行するG四重鎖 MYCのプロモーター領域内にあるヌクレアーゼ高感受性領域NHE III1は、MYC転写の最大90%をコントロールしている。この領域には、ピリミジンおよびプリンに富む鎖が含まれており、別のDNA構造をとりうると考えられている。特に、グアニン路6個を含む27ヌクレオチド長のプリンが豊富な鎖は、グアニン(G)四重鎖構造を複数形成すると考えられている。G四重鎖は、2層以上連続するGテトラッドより成り、中空の箱型構造をとる。Gテトラッドは、環状で水素が結合した四角面に並んだグアニン4塩基より成る(右図参照)。これらのグアニンがアデニンに置換すると、この構造が破綻してMYC転写が増大するが、低分子リガンドTMPyP4によってG四重鎖が安定していれば、MYC転写は抑えられる。

Anh Tua^n Phanらは、カリウムイオン溶液中で、MYCNHE III1配列から24ヌクレオチドの5グアニン路シークエンス(Pu24) を取り出した。グアニン路を5個用いたことにより、グアニン路4個を用いて取り出していた以前の構造には見られなかった新しい構造モチーフが明らかになった。Phanらは、この構造を基に一連の変異を作り出すことによって、このG四重鎖のフォールディングおよび形成にとって重要な新規モチーフを特定した。 G四重鎖と4種の異なるリガンドとの相互作用の構造解析により、4リガンドはいずれもGテトラッド中心の頂部に結合するが、そのリガンドがもつ作用により、G四重鎖の安定性が希薄になることが明らかになった点は重要である。実際、TMPyP4リガンドのG四重鎖への結合速度が動力学的に小さければ、複合体の安定性が特に強化されることから、そのMYC転写抑制能力がわかる。

Phanらは、Pu24について詳細がわかった新しい構造モチーフおよびフォールディング原理は、ほかのG四重鎖構造の理解を深めるものになるとの結論を導いている。このような構造は、ほかの癌遺伝子プロモーターなどの抗癌剤標的候補とテロメアに明らかである。

doi:10.1038/nrc1702

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