Research Highlights

死を物ともしない依存症

Nature Reviews Cancer

2006年7月1日

向アポトーシスタンパク質および抗アポトーシスタンパク質のBCL2ファミリーの機能が変化することによると見られるアポトーシスの回避は、細胞の発癌性形質転換のきわめて重要な段階であると考えられる。Anthony Letaiらは、BCL2ファミリーメンバー間の特異的相互作用を一部解読し、いわゆる「死の準備ができている」細胞の状態を特定した。

BCL2ファミリーのタンパク質は、BCL2の相同性領域および機能に基づいて、マルチドメイン抗アポトーシスタンパク質(BCL2、BCLX-Lなど)、マルチドメイン向アポトーシスタンパク質(BAX、BAK)、BH3-only(BH3ドメインのみ)の向アポトーシスタンパク質(BIM、 BID、BADなど)の3つに分けることができる。BH3-onlyタンパク質はさらに、活性化因子(BIM、BID)と感作因子(BAD、NOXA)とに分けられている。

Letaiらは、蛍光偏光結合アッセイを用いて、抗アポトーシスBCL2タンパク質と、既知のBH3-onlyタンパク質のBH3領域に対応するオリゴペプチドのパネルとの相互作用にみる選択性を明らかにした。グルタチオン-S- トランスフェラーゼ融合タンパク質として、トランスフェクトした細菌から抗アポトーシスタンパク質を精製し、BH3ペプチド(それぞれがN末端のフルオレセインイソチオシアナート部分につながっている)のパネルに対するタンパク質の結合能力をその解離定数によって測定した。Letaiらは、抗アポトーシス性のファミリーメンバーが、特定のBH3領域に対する結合親和性のパターンを個別にもっていることをつき止めた。しかも、個々のBH3領域の結合選択性は、抗アポトーシスタンパク質に拮抗する能力に対応していることがin vitroの系でわかった。

この「BH3プロファイリング」戦略を細胞系でさらに検証した。前リンパ球性マウスFL5.12細胞系は、生存にインターロイキン3 (IL3)を必要とする。IL3を取り除くと、BCL2に対する親和性が高い活性化因子BH3-onlyタンパク質BIMの細胞内レベルが劇的に上昇することが明らかにされた。BCL2はBIMを封鎖することによってBAXオリゴマー化およびアポトーシスの誘導を妨げるため、BCL2が過剰発現する FL5.12細胞からIL3が奪われると、BIM活性によってこの細胞はBCL2に完全に依存する。このため、IL3が枯渇したFL5.12-BCL2細胞のミトコンドリアは、BCL2 (BAD、PUMA、BMF、BIK)に対する親和性が高く、BCL2とBIMを置き換えてBAXオリゴマー化を可能にする感作因子BH3ペプチドに感受性を示す。また、BH3プロファイリングによって、細胞のBCL2に対する依存性と関連抗アポトーシスタンパク質のMCL1に対する依存性とを区別することができた。

この機序によって、BCL2過剰発現が一部の白血病で担う役割がわかるだろうか。Letaiらは、BCL2が過剰発現する白血病細胞は、 BCL2に対する親和性の高いBH3ペプチドに感受性を示すことを明らかにし、この白血病細胞は「死の準備ができている」と結論付けた。その上で、この細胞はBIM発現レベルが高く、これによってBCL2に対する細胞の依存性を説明できる可能性がある、としている。

BH3プロファイリングは、どの抗アポトーシスBCL2タンパク質に腫瘍細胞が依存しているかを知る強力な予測因子である。したがって、この技術は現在製造中のBH3模倣薬のうち、どれを用いればBCL2ファミリータンパク質の抗アポトーシス性メンバーが過剰発現する腫瘍を治療できるかを予測するのに有用ではないかと思われる。

doi:10.1038/nrc1933

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