Research Highlights

破壊的な影響

Nature Reviews Cancer

2006年3月1日

膵癌の新しいマウスモデルが、トランスフォーミング増殖因子β (TGFβ)シグナル伝達経路の途絶によって前癌病変が発生することを示している。

膵癌の予後はどの消化管癌よりも不良である。その主な理由は、早期に臨床症状がなく、膵癌と診断されても効果的な治療法がないことにある。このため、診断および治療の新しい戦略を特定するには、すぐれた早期膵癌in vivoモデルの作製が必要である。

膵癌の発生には、さまざまな遺伝的障害が寄与することがわかっている。特に、ヒト腫瘍の50%超では、シグナル伝達物質SMAD4のホモ接合性欠失により TGFβシグナル伝達が遮断されている。さらに検討を重ねようと、Chenzhong KuangとYan Chenらは、トランスジェニック技術により、TGFβシグナル伝達経路の阻害因子であるラットSmad7をマウス膵組織に特異的に発現させた。

SMAD7が検知しうるレベルで発現したことを確認してから、Kuangらは膵内の組織学的変化を分析した。このマウスには6カ月齢で、浸潤性癌の前駆体である膵上皮内新生物(PanIN)が発生した。免疫組織化学的分析では、腫瘍が膵管上皮から生じることが確認され、その細胞の活発な増殖が明らかになった。

Kuangらは、腫瘍形成の早期に抗増殖作用を発揮するTGFβシグナル伝達を遮断すると、PanIN発生が助長されるとの結論を導き、この悪性度の高い癌の新しい治療法の特定に、自らのマウスモデルが有用になるはずであると示唆している。

doi:10.1038/nrc1831

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