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クラススイッチを切る

Nature Reviews Microbiology

2006年4月1日

体液性免疫の障害はHIV感染でよく知られた特徴であるが、B細胞の機能障害の背後にあるメカニズムについてはよくわかっていない。今回Nature Immunologyに掲載された研究は、HIV-1が直接B細胞の機能を阻害する新しいメカニズムについて論じている。Andrea Ceruttiらは、HIV-1ネガティブ因子(Nef)タンパク質がバイスタンダーB細胞に入り、IgGおよびIgAなどのクラススイッチした免疫グロブリンの産生を阻止することを報告した。

B細胞は免疫グロブリンクラススイッチ組換(CSR)とよばれる過程によってIgGおよびIgAを産生するが、この過程は活性化CD4T細胞がIgDB細胞に結合すると開始する。T細胞サイトカインであるインターロイキン(IL)-10およびIL-4の分泌と共に、T細胞CD40リガンド(CD40L)を通したシグナリングにより、IgG、IgAあるいはIgE重鎖遺伝子の転写が誘導される。さらに、活性化B細胞は形質細胞に分化して大量のIgG、IgAあるいはIgEを分泌する。IgMと比べ、これらのクラススイッチした免疫グロブリンは侵入する病原体の侵入部位での中和能を含む新しいエフェクター機能を獲得する。HIV-1感染では、特異的な抗原に対するT細胞依存性IgGおよびIgA抗体応答は次善最適であることから、クラススイッチのプログラムが損なわれていることが示唆される。ウイルスによるCD4T細胞の破壊がB細胞の機能の損傷に役割を有することは明らかであるものの、これだけではHIV-1感染における体液性免疫の機能障害のすべてを説明することはできない。

HIV-1はB細胞には感染しないことから、著者らはB細胞の機能を破壊するであろう可溶性因子を検索した。かれらは感染細胞から細胞外環境に放出される免疫抑制性初期HIV-1タンパク質Nefに焦点を当てた。

著者らは、まず、Nefが細胞外環境からIgDB細胞に侵入することを証明した。CSRの分子マーカーを検出するアッセイから、外因性Nefタンパク質はCD40L、IL-4およびIL-10により活性化されたB細胞におけるCSRの誘導を阻害することを明らかにした。Nefは調節タンパク質IκBαを増量することによりCD40シグナリング経路を阻止する。IκBαの増量により、CSR開始の転写プログラムの誘導に必要な段階である細胞質のNF-κB二量体のB細胞核への輸送が阻止される。さらに、Nefは負のフィードバックタンパク質であるSOCS1およびSOCS3を上方制御し、その結果IL-4およびIL-10により誘導されるJak-STAT経路が阻害される。Jak-STATシグナリングの阻害によってCSRが損なわれ、クラススイッチしたB細胞の抗体産生細胞への分化が阻止される。

HIV-1 Nefにより免疫グロブリンクラススイッチが阻害されると、ウイルスの中和および除去に最も優れたクラスの抗体の産生が阻止される。このことがCD4T細胞プールの十分な感染初期段階でのウイルスの進行に特に重要である。

doi:10.1038/fake760

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