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MutS2が多様性の鍵をにぎる?

Nature Reviews Microbiology

2005年3月1日

最近Molecular Cell誌に報告された論文によると、胃への病原体であるHelicobacter pyloriの研究で、MutS2タンパク質の機能がついに突き止められた。

H. pyloriはこれまでに研究されている細菌の中で遺伝的多様性が最も高い種の一つであり、ここ5〜6年、H. pyloriゲノムの柔軟性を主題とする多くの研究が行われている。胃粘膜では細菌間の遺伝物質の交換が頻繁に行われており、組み換えがH. pyloriの遺伝的多様性を生む主要な機構と考えられている。

大腸菌では、MutSタンパク質がミスマッチ塩基を特異的に認識するため、複製後のミスマッチ修復および組み換え中に生じたミスマッチの除去に重要な役割を演じている。MutS同属体は、大腸菌のMutSを含むMutS-IファミリーとMutS-IIファミリーの2つのファミリーが知られている。H. pyloriで推定されているミスマッチ修復系で唯一証明されているのは、オープンリーディングフレームHP0621であり、MutS-IIファミリーに属するMutS同属体、MutS2をコードしている。

細菌のMutS2の諸タンパク質の機能については、最近までわかっていなかった。Pintoらは、H. pyloriMutS2タンパク質がミスマッチ修復に役割を有するのかを初めて研究した。H. pylorimutS遺伝子を多様な遺伝的背景で破壊し、必須遺伝子座(リファンピシン耐性を付与するrpoB)および非必須遺伝子座(メトロニダゾール耐性を付与するrdxA)の自然発生突然変異率を野生型細菌の場合と比較した。mutSを破壊しても変異率は殆ど影響を受けないことより、著者らはH. pyloriMutS2タンパク質はミスマッチ修復には関与しないと結論した。

MutS-IIファミリーには真核生物MSH4およびMSH5タンパク質が含まれており、これらは減数分裂組み換えに関与している。MutS2がミスマッチ修復に関与していないとすると、相同組み換えに役割を有するのだろうか。Pintoらは選択マーカーの非必須遺伝子座への取り込みを調べ、MutS2遺伝子の破壊されたH. pyloriの組み換えは野生型の5倍に上昇することを示した。制限系へのいかなる影響も排除し、結果はMutS2は組み換え阻害に役割を有するという予想と一致した。組み換え頻度が上昇するのは同一配列間のみではなく、異なる配列の分子間でも見られることより、MutS2は相同および非相同組み換えを阻害することを示唆した。最後に、生化学的解析より、MutS2はATPアーゼ活性を有し、組み換え中間体に類似した構造に親和性を有し、in vitroにおいてDNA鎖の転移も阻止することを示した。

細菌のMutS2タンパク質は、組み換えを抑制することにより細菌の遺伝的多様性を制御する重要な役割を果たすのであろう。著者らは、結論として、これらのタンパク質は表現変異体および新たな抗生物質耐性の出現に重要な因果関係があったであろうことを強調している。

doi:10.1038/fake749

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