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セコンドアウト、Streptomycesは第2ラウンド!

Nature Reviews Microbiology

2003年5月1日

強力な寄生虫駆除薬であるアベルメクチンは、1979年にSatoshi Omuraが実用微生物Streptomyces avermitilisから単離した。Streptomyces coelicolorゲノムの塩基配列が決定されて間もない現在(Bentley et al., 2002)、OmuraらはNature Biotechnology誌にS. avermitilisゲノムの塩基配列を報告している。

Streptomycesの注目すべき点は、染色体およびプラスミドの線形性、複雑な生態、ならびに抗生物質をはじめとする有用二次代謝産物の産生である。この細菌のゲノムは大きく(>8 Mb)、S. avermitilisも例外ではない。ゲノムは9.02Mbあり、ORFは7574個と推定されている。ORFの2664個は721個のパラロガス遺伝子ファミリーを形成しており、遺伝子の3分の1以上が重複によって生じたと考えられる。遺伝子の3分の1は機能が未知であり、S. coelicolorでのみ保存されている。

S. coelicolorゲノムに関して興味深い点のひとつは、シグマ因子(ホロ酵素RNAポリメラーゼを特定のプロモーターに結合させるタンパク質)が65個あることであり、これは細菌界で最多であった。S. avermitilisにはシグマ因子が60個あり、この制御方式がStreptomycesで最重要となっていることが支持される。細菌の多くではチトクロームP450をコードする遺伝子が少ないが、S. avermitilisには33個と過剰にあり、細菌に見出されたものとしては過去最多である。その3分の1は二次代謝産物の生合成に関与し、残りは土壌中の毒性化合物に対する防御に寄与している可能性がある。S. avermitilisゲノムの特徴として、RNAポリメラーゼのαサブユニット(rpoA)をコードする遺伝子がふたつある点が挙げられる(これまでに塩基配列が決定された全細菌ではひとつである)。S. avermitilisは、転写装置の複雑さから、細菌の転写複合体の研究材料として取り上げられる可能性がある。

Streptomyces属は放線菌類に属している。放線菌類には、哺乳類の病原体であるMycobacterium tuberculosis(結核)、Mycobacterium leprae(ハンセン病)、およびCorynebacterium diphtheriae(ジフテリア)なども属している。その生態はきわめて異なっているが、放線菌類のゲノムの比較から、生育に必須の遺伝子を含んだ6.5Mbの中核部分が保存されていることがわかっている(ただし、コリネバクテリウムおよびマイコバクテリウムの染色体は環状である)。中核部分に隣接する左腕および右腕には非必須遺伝子が多く、30個あるオペロンの57%が二次代謝産物産生に使用されている。

両腕には、S. avermitilis固有の遺伝子のほぼ半数があり、トランスポザーゼと推定される遺伝子99個およびインテグラーゼと推定される遺伝子16個もその大半がここにある。線形染色体の特徴ともいえる新規遺伝子の獲得には、両腕の可動因子が寄与した可能性がある。保存された中核部分が放線菌の祖先を表し、おそらくゲノムの線形性ゆえに可能となった変異プロセスによって多種に分岐した結果、多能なStretomyces属が生まれたのであろう、と推測されて興味深い。

最後に、塩基配列が決定されたStreptomycesの両種には、さまざまな二次代謝産物を意味ありげにコードする遺伝子集団が多数あり、その塩基配列からは薬用天然物発見のための新規標的が多数利用される可能性がある。

doi:10.1038/fake732

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