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XLPではNKT細胞に欠陥がある

Nature Reviews Immunology

2005年4月1日

X連鎖性リンパ組織増殖性疾患(XLP)はヒトの免疫不全症候群の1つで、アダプター分子であるSAP(signalling lymphocytic activation molecule (SLAM)-associated protein)をコードしている遺伝子に起こった突然変異が原因である。SAPを欠くヒトやマウスでは、T細胞、B細胞およびナチュラルキラー(NK)細胞の数は正常だが、T細胞とNK細胞の機能に欠陥があり、そのために免疫応答が損なわれる。今回、K Nicholsらは、SAPの欠損がナチュラルキラーT(NKT)細胞の分化を阻害すること、またこれがXLPの一因である可能性を明らかにした。

SAPはSRCファミリーのキナーゼFYNをSLAMファミリーに属する受容体へ誘導することが知られている。FYNはNKT細胞の分化に必要なことがわかっているので、著者らはNKT細胞の欠陥がXLPの一因ではないかと考えた。逆転写PCR法による解析で、SAPは野生型マウスのNKT細胞で発現していることがわかった。SAPを欠くマウス由来の脾細胞にNKT細胞特異的に働くアゴニストであるα-ガラクトシルセラミドを与えると、産生されるインターフェロンγとインターロイキン4の濃度は測定不可能なまでに低下した。NKT細胞の欠陥は量的なものなのか、質的なものなのか決めるために、SAPを欠くマウス由来の細胞についてフローサイトメトリーを使って調べたところ、SAP欠損マウスのNKT細胞の数は野生型マウスに比べると大幅に低下しており、この欠陥は量的なものであることが示された。

Nicholsらは次に、この欠陥がSAPを欠く造血細胞あるいは非造血細胞のどちらに固有なのかを調べた。骨髄キメラを使った実験で、NKT細胞は野生型マウスの骨髄細胞からのものだけが分化できることがわかった。つまり欠陥は造血細胞自律的といえる。XLP患者17人について調べたところ、末梢血中のNKT細胞の数は、XLPに罹患していない人と比較すると97%低下していることが観察された。XLPの女性キャリアーについて遺伝的解析を行ったところ、X染色体不活性化はNKT細胞に偏って起こり、TあるいはB細胞では見られないことが明らかになり、SAPがNKT細胞の分化に必要であるが、TあるいはB細胞の分化には必要でないという考えが裏付けられた。

この研究は、ヒトとマウスでSAPがNKT細胞の分化に必須であること、またNKT細胞の欠損がXLPの一因である可能性を明らかにしている。しかし、NKT細胞でSLAMファミリーのどのメンバーがSAPと結合するのかはわかっていないし、シグナル伝達経路の詳細もまだ不明である。

doi:10.1038/fake619

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