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免疫系を増強する

Nature Reviews Immunology

2003年11月1日

The Journal of Clinical Investigationに発表された最近の論文によれば、インターロイキン-7(IL-7)の投与は、同種造血幹細胞移植(HSCT)を受けた患者(レシピエント)の末梢T細胞集団の再構築を促進するようだ。 HSCTを受けた後、患者は長期にわたる移植後免疫不全を経験する。T細胞の再構築はとりわけ遅い。IL-7はリンパ球生成という役割に加えて、末梢T細胞集団サイズの重要な調節体であり、T細胞の生存と増殖を促進する。IL-7のこの恒常性維持に関わる役割を治療に活かし、同種HSCTを受けた患者でのT細胞の再構築を促進することはできないものだろうか。 Marcel van den Brink らは移植後のT細胞再構築に対するIL-7の影響を調べる前に、まずマウスで骨髄移植後に存在するドナーT細胞の性質を調べた。移植後の同種宿主中にはドナーT細胞の集団3種類が見つかった。それらは、急速に増殖する同種反応性細胞(宿主抗原に反応して移植片対宿主病(GVHD)を引き起こす)、増殖の遅い、非同種反応性T細胞、および増殖を行わない非同種反応性細胞であった。 同種レシピエントに移植されたT細胞は、同系レシピエントに移植されたT細胞よりもIL-7受容体の発現レベルが低かった。さらに調べると、急速に増殖する同種反応性T細胞では、IL-7受容体の発現が抑制されていた。このことは、同種反応性T細胞はIL-7に対して感受性を示さない可能性を示していた。従って、このサイトカインを使った処置はGVHDに対する影響が少ないかまったくないかもしれないし、非同種反応性T細胞のクローン拡大を誘導し、T細胞集団の再構築を促進するかもしれないと考えられた。 さらに実験を行って、これらのことは実証された。つまり、IL-7の投与は非同種反応性T細胞の増殖を進めるが、同種反応性T細胞やGVHDの発症にはなんの影響も無かったのである。また、新たに生じたT細胞の恒常的な増殖は、T細胞再構築にも重要だが、これはIL-7投与によって促進される。最後に、著者らは、IL-7投与はドナーT細胞とRTEに対する増殖促進効果に加えて、末梢におけるT細胞アポトーシスのレベルも低下させることを明らかにした。 この研究は、IL-7の臨床的な可能性を明らかにしたものである。IL-7は、T細胞に対して抗アポトーシス的影響を及ぼし、また選択的な増殖を促すため、HSCT後の患者で、GVHDを引き起こすことなく、免疫能力を改善するのに使えると考えられる。

doi:10.1038/fake605

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