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免疫系が燃え尽きる時

Nature Reviews Immunology

2003年1月1日

HIV-1感染の制御ができなくなると、感染者で免疫不全や免疫系の崩壊が起こることになる。HIV-1はCD4+T細胞に直接感染して殺してしまうのに加え、慢性的な免疫活性化を引き起こす。これが免疫不全を引き起こす一因だと考えられてきた。今回、Rene van Lierらは、CD27-CD70の相互作用を介する慢性的な補助刺激によって、持続的な免疫活性化を起こし、これが実際に死に至る免疫不全を起こし得ることを明らかにした。 CD27などの腫瘍壊死因子受容体ファミリーに属する受容体は、多様な免疫的過程の調節に関わっており、免疫細胞の増殖や生存もこうした過程の中に含まれている。CD27受容体のリガンドであるCD70は、抗体刺激を受けた後に活性化されたリンパ球で発現される。van Lierらは、B細胞が慢性的にCD70を発現している、Cd70-トランスジェニックマウスをモデルとして用いて、免疫系の持続的活性化の影響を調べた。 Cd70-トランスジェニックマウスでは、脾臓と末梢リンパ節中のエフェクターT細胞の数が増大しているが、これはT細胞の増殖が促進されているためである。時間と共にナイーブT細胞の生産が減少するにつれて、二次リンパ器官内のナイーブT細胞数は減少するが、エフェクターT細胞や記憶T細胞は溜まっていく。さらに、このエフェクターT細胞や記憶T細胞の過剰生産は、CD27-CD70の相互作用と外来抗原の存在に依存しているが、インターフェロン-γには依存していないことがわかった。 T細胞集団に生じたこのような変化は、Cd70-トランスジェニックマウスの健康にどのように影響するのだろうか。このトランスジェニックマウスの殆どが、生後20週までにPneumocystis cariniiによる肺炎を起こし、ほぼ28週あたりで若年死した。この肺炎は日和見感染の1種で、重篤なT細胞免疫不全の場合によく見られるものである。 この研究は、慢性的なHIV-1感染の間に起こると考えられてきた、持続的な免疫活性化が致死的な免疫不全を充分起こし得ることを明らかにしたものだ。HIV-1感染患者の活性化されたT細胞では、CD70の発現が増大することがわかっているので、著者らは持続的な免疫活性化のもたらす有害な影響を避けるためには、CD27-CD70の相互作用が治療標的となるのではないかと考えている。

doi:10.1038/fake597

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