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尻尾がイヌを振る場合

Nature Reviews Molecular Cell Biology

2006年4月1日

ヒストンタンパク質のN末端尾部は、遺伝子の活性に重要な翻訳後修飾を行うプラットフォームとなる。こういう修飾の1つであるH4ヒストンのLys16のアセチル化(H4K16Ac)は転写活性化とユークロマチンの保持に関連している。C Petersonらは、ヒストン中のこの1個のアミノ酸の修飾がクロマチンの折りたたみを阻害し、それによってクロマチンを「開いた」コンフォメーションに保って遺伝子の転写が起こるようにしていることをScience誌に報告している。

以前の研究で、H4尾部のK16を含む領域が直径30nmのクロマチン繊維の形成に重要であることがわかっている。K16の修飾がより高い次元のクロマチン形成を制御している可能性を調べるため、Petersonらは、K16残基がアセチル化されたH4尾部ペプチドを合成し、それをH4タンパク質の残りの部分に付着してみた。この組換えH4タンパク質はヒストン八量体に取り込まれ、鋳型DNAと結合してヌクレオソームアレイが作られた。

ヌクレオソームアレイが「糸に通したビーズ」のようなコンフォメーションをとるような条件下で、野生型ヒストン、H4K16AcあるいはH4-ΔN(N末端の尾部領域を欠く)のいずれかを含むアレイについて調べたところ、全部がほとんど同じ沈降係数を持つことが解った。しかし、クロマチンの凝縮を促進するマグネシウム塩を添加すると、野生型H4アレイでは平均的な沈降係数が上昇した。これはコンパクトな30nm様繊維が形成される場合と同じである。これに対して、H4K16AcあるいはH4-Δを含むアレイは十分な凝縮を起こせず、平均沈降係数の上昇も少なかった。

マグネシウム塩の濃度をさらに上昇させると、より高次元のクロマチンドメインを安定化するクロマチン繊維間の相互作用によるアレイの自己集合が促進された。H4K16AcあるいはH4-Δを含むアレイの自己集合には、野生型H4を含むアレイの場合より高濃度のマグネシウム塩が必要であった。つまり、H4K16のアセチル化はH4尾部全体の欠失と同じような影響を及ぼし、30nm繊維の形成と繊維間の相互作用を阻害する。実際、H4K16Acを含むヌクレオソームアレイは、転写が活発に行われている遺伝子が多く含まれることが知られているMgCl2可溶性クロマチン分画中に主に存在しており、in vivoでH4K16Acは凝縮していないクロマチンと会合していた。

さらに、PetersonらはH4K16Ac修飾が、ATPに依存して起こるクロマチンの集合とリモデリング因子(ACF)複合体の機能に影響するかどうかを調べた。この複合体はH4尾部に会合してヌクレオソームがDNA上を移動できるようにする。著者らは、ACFを加えた野生型のモノヌクレオソームではかなりの移動が認められるが、H4K16Acを含むヌクレオソームでは移動が低下することを見出した。

これらの結果は、単一のヒストン修飾がより高次元のクロマチン形成を阻害し、クロマチンリモデリング酵素の活性を制御することで、クロマチンの状態を大幅に変化させ、クロマチンを凝縮しない、転写が活発に行われるコンフォメーションに保ち得ることを示している。

doi:10.1038/fake591

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