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補修要員というだけじゃない

Nature Reviews Molecular Cell Biology

2005年9月1日

高等生物では成体幹細胞が増殖性と多能性を備えており、これによってさまざまな組織の保持と再生が可能になっている。これらの幹細胞ではテロメラーゼの発現レベルが高い。テロメラーゼは、リボ核タンパク質からなる酵素でDNA複製に際してテロメアの伸長を行う。テロメアが十分な長さをもっていないと細胞分裂が起こらないので、成体幹細胞でテロメラーゼの活性が高くなっているのは、おそらく細胞に大きな増殖能を持たせるためだろうと考えられている。

しかし、幹細胞のテロメラーゼは幹細胞区画で染色体末端の構造保持に働く以外に、何らかの役割を持っているのだろうか。スペイン国立癌センターのM Blascoらは、テロメラーゼ発現欠損のマウスモデルを使い表皮幹細胞の挙動を調べることでこの問題に取り組んだ。

著者らは、テロメアの長さがほんの少し短いだけのG1テロメラーゼ欠失(Terc-/-)マウスと、テロメアが極度に短いG3Terc-/-マウスでは、表皮幹細胞が毛嚢のふくらんだ部分にある幹細胞ニッチに集積することを明らかにした。G1とG3マウス由来の細胞は共に毛嚢からうまく移動できず、増殖を促す刺激を受けても毛の成長を開始できなかった。また、G1およびG3Terc-/-マウス由来の表皮幹細胞は共に、in vitroでの増殖能が損なわれていた。

これに対して、表皮幹細胞がテロメラーゼのタンパク質成分を過剰に発現しているK5-mTertマウスでは、毛嚢ニッチに幹細胞が溜まっておらず、増殖刺激を受けた際に移動を起こす幹細胞の比率が野生型のマウスに比べて高かった。このマウスの表皮幹細胞はまた、in vitroでも際立って高い増殖能を示した。

これらの結果をまとめると、テロメラーゼの役割は染色体末端の維持だけではないように考えられる。どうやらテロメラーゼ活性自体が、幹細胞のターンオーバー調節や移動の調節に重大な役割を持っているらしい。Terc-/-マウスは老化抵抗性の表現型を持ち、K5-mTertでは皮膚腫瘍を起こす傾向が見られるので、テロメラーゼが幹細胞の挙動に及ぼすこうした影響は、癌と老化の両方について原因を考える際に重要であろう。

doi:10.1038/fake583

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