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要するに長いか短いかが問題

Nature Reviews Molecular Cell Biology

2004年6月1日

テロメアの長さの制御は、伸長反応の効率による(つまり、テロメラーゼはあらゆるテロメアのところに動員されるが、テロメアが短い場合に活性が高くなる)のだろうか。それとも、テロメラーゼが作用するのは一部のテロメアであって、どのテロメアに作用するかが長さに応じて決まるということなのだろうか。Cellに掲載されたJoachim Lingnerたちの論文によれば、後者モデルが正しいという。
テロメアの長さを一定に保つしくみを調べるため、Lingnerたちは生体内in vivoで1回のテロメア伸長反応を測定できる系を開発した。テロメラーゼをもたない酵母Saccharomyces cerevisiae株に、野生型酵母から接合によってテロメラーゼを導入した後で、このテロメラーゼ欠損株のテロメアをPCRで増幅し、クローン化して配列を調べた。すると、酵母テロメラーゼがつくるテロメアDNAの配列が不規則になっており、それによって個々のテロメア伸長反応を十分に識別することができた。
1回の細胞周期の間に起こるテロメア伸長反応を測定したところ、伸長するテロメアは40%に満たないことが明らかになった。つまり、テロメア長の恒常性維持は、第1のモデルが示すようなテロメラーゼ活性の調節によるのではないことになる。
テロメアの長さと伸長反応の起こり方とを比較すると、テロメアがどのくらい伸長するかはまちまちで、しかももとのテロメアの長さには無関係なことがわかった。しかし、テロメアを長さにしたがって分類し、テロメアの平均の長さと伸長反応の頻度の関係をグラフにすると、明らかな相関が認められた。実際、最も短いテロメアは、野生型程度の長いテロメアに比べ、伸長の起こる確率は6倍にもなった。
では、テロメアの長さはどのようにしてテロメアの伸長反応の頻度を制御するのだろうか。テロメアの長さを調節する負のフィードバック機構に、酵母のRap1などのような特定のテロメア結合タンパク質がかかわっていることが、以前に明らかになった。この「タンパク質による計測機構」は、テロメア結合タンパク質の個数を基準にテロメアの長さの情報を伝達する。Rap1によってテロメアへと動員されるRif1、Rif2タンパク質が、テロメア長の制御のためのRap1による計測機構にかかわっていると考えられている。
Lingnerたちは、Rif1とRif2のどちらかがないとテロメアの伸長反応の頻度が野生型に比べて2倍になることを明らかにし、Rif1とRif2が働きかけることによって、テロメアが伸長できない状態になっているのだろうと見ている。
これらの知見に基づいてLingnerたちは、2つの状態の切り替わりモデルを提案している。つまり、長いテロメアは大量のRap1-Rif1-Rif2複合体を引きつけ、この複合体がテロメアを伸長不能状態にするが、テロメアが短くなって複合体の大半を失うと伸長可能状態にもどる。テロメアの長さが一定に保たれるのは、この2つの状態の平衡によるというのである。

doi:10.1038/fake568

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