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ファゴソームでくつろぐ細菌

Nature Reviews Molecular Cell Biology

2002年12月1日

淡水生態系の原生動物が感染する水生細菌であるLegionella pneumophilaをヒトが吸い込むと、レジオネラ症という重症の肺炎になる。L. pneumophilaがヒトの肺に入ると、肺胞マクロファージに取り込まれファゴソームとなる。ところが、L. pneumophilaは、マクロファージのリソソームによって分解されず、言わば「我がもの顔」の状態になる。この細菌は宿主の小胞輸送過程を乗っ取り、自分自身の複製に役立つ小胞体(ER)由来の液胞を作るのだ。どのようなプロセスでそうなるのだろうか? この点について新たな知見が示したKagan & Royの論文がNature Cell Biologyに発表された。この論文では、L. pneumophilaを取り込んだファゴソームがER由来の液胞に成熟し、その過程が二相的であることが示されている。このファゴソームは、まず早期分泌性小胞(ERからER-ゴルジ体間中間区画[ERGIC]まで輸送される小胞)と相互作用し、次いでERに集中するマーカータンパク質を取り込むのだ。それでは、このファゴソームはどのようにしてERに到達するのだろうか? コレラ毒素や志賀毒素については、ゴルジ体を経由する輸送経路によってERに到達することが既に知られている。しかしKagan & Royの論文では、L. pneumophilaを取り込んだファゴソームが中間区画(ゴルジ体あるいはERGIC)と相互作用しないことが示されている。むしろ彼らは、このファゴソームが移行型ER(tER)(ERから早期分泌性小胞が分泌される動的な部分)と直接的に相互作用し、L. pneumophilaが、この部分からの小胞輸送を阻害し、ER由来の液胞を産生することを発見した。さらに彼らは、液胞の産生をエンドサイトーシス経路から隔離して安定的に行うためには早期分泌性小胞輸送の阻害が必要なことを明らかにした。 このようにKagan & Royの論文では、L. pneumophila が宿主の細胞過程を阻害する新たなメカニズムが示された。彼らは、L. pneumophilaがtERと相互作用し、ER由来の小胞を集合させるメカニズムを解明することが、tERで小胞輸送を調節する宿主の因子を特定する上で役立つかもしれないと考えている。

doi:10.1038/fake551

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