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ますます広がるマイクロアレイの用途

Nature Reviews Genetics

2005年2月1日

オリゴヌクレオチドマイクロアレイを遺伝子発現研究だけに用いる時代は過ぎ去った。むしろ、例えば遺伝子型判定でマイクロアレイの果たす機能などの方が、もともとの用途よりも重要な意味を持つようになったといえるのではないだろうか。最近発表された2つの論文では、マイクロアレイのさらなる用途が紹介されている。Ronald et al.の論文では、マイクロアレイを使って遺伝子発現研究と遺伝子型判定を同時に行えることが示されており、Barrett et al. の論文では、マイクロアレイが比較ゲノムハイブリダイゼーションに有益なことが示されている。

従来の遺伝子型判定実験では、マイクロアレイ上でDNAのハイブリダイゼーションが行われていた。これに対して、Ronaldたちは、mRNAを用いることで遺伝子発現研究と遺伝子型判定を組み合わせて実施し、マイクロアレイ上に現れた遺伝情報をフルに活用しようとした。実験当初、Ronaldたちは、この新しい設計によるマイクロアレイを精緻化する必要に迫られた。例えば、ハイブリダイゼーションシグナルが弱い場合には、プローブとmRNAがミスマッチである(多型性)のか、単に遺伝子発現レベルが低いのか、を直ちに判定できなかった。そこで、オープンリーディングフレーム(ORF)ごとにいくつかのプローブを使って、この2つのいずれであるのかを判定した。その結果、Ronaldたちは、Saccharomyces cerevisiaeの2つの菌株を比較して、多型性を有する遺伝子座を同定した。mRNAを使った方法は、DNAを使った方法ほど感度が高くないが、Ronaldたちは、4cMあたり約1個の割合でマーカーを得た。これだけあれば、かなりの連鎖情報が得られる。

Ronaldたちの新しい方法の長所は、対立遺伝子特異的な発現を検出できる点だ。Ronaldたちは、2種類の酵母株の二倍体ハイブリッドで対立遺伝子特異的な発現が見られる70のORFを同定した。彼らは、二倍体において菌株特異的な対立遺伝子のいずれか一方が他方よりも発現強度が強いことを示すプローブを追跡調査し、その結果を定量的PCR法で確認した。

遺伝子発現研究と遺伝子型判定を組み合わせると、候補遺伝子を同定しやすくなる。ここで重要なのは、この組み合わせによって、対立遺伝子特異的な発現が見られるORFを同定でき、遺伝子発現の遺伝学的性質を研究する上で有益なツールになりそうだという点だ。

Barrettたちは、新たなマイクロアレイを考案し、ゲノムの複数の遺伝子座における遺伝子コピー数の変動を検出できるようにした。通常、このような作業は、マイクロアレイベースの比較ゲノムハイブリダイゼーション(CGH)を使って行われている。この実験方法は、BAC中に存在するPCRクローンまたはcDNAとして存在するPCRクローンがベースになっている。Barrettたちは、丁寧に設計されたマイクロアレイ上でゲノムDNAのハイブリダイゼーションを行うことで従来のCGHを改善した。彼らは、CGH測定のために特に最適化された60量体のオリゴヌクレオチドアレイを使って、単一コピーやホモ接合の欠失とヒト癌細胞系における複雑な再配列の検出に成功したのだった。

Barrettたちが考案した方法の重要なメリットは、ゲノム上のどの領域でもコピー数の変動を調べることができる点だ。従来の方法は、発現配列やBACにクローン化された配列にしか使えなかった。Ronaldたちの方法は、偽陽性の結果が出る確率が結構高いという問題があり、今後の改良が待たれる。BarrettたちのマイクロアレイベースのCGHも改良を必要としている。が、いずれにせよ、マイクロアレイは、いまや急速に「何でも屋」的ツールとなりつつあるのだ。

doi:10.1038/fake490

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