【老化】一般的な糖尿病治療薬でマウスの寿命が延びる
Nature Communications
2013年7月31日
糖尿病治療薬として広く処方されているメトホルミンを雄のマウスに投与したところ、このマウスが、それまでより健康で長生きの生活が送れるようになった。この研究結果を報告する論文が、Nature Communicationsに掲載される。
メトホルミンは、1960年代以降、2型糖尿病とメタボリック症候群の治療に処方されている。また、メトホルミンの使用とがんや心血管疾患の発症率低下との結びつきが、疫学研究によって明らかになっている。がんと心血管疾患は、加齢に伴って発症率が上昇する。これまでの研究では、メトホルミンが線虫のような下等モデル生物の寿命を延ばすことが明らかになったが、ショウジョウバエや哺乳類に関しては一貫した証拠が得られていない。今回、Rafael de Caboたちは、中齢の雄のマウスに2種類の用量でメトホルミンを投与する実験を行い、用量が少ない場合に寿命が約5%延び、老化関連疾患の発症が遅くなることを明らかにした。また、寿命の長いマウスは酸化ストレスと炎症の程度が低く、このことはカロリー制限の分子的影響に似ているところがある。カロリー制限は、食餌療法の1つで、さまざまなモデル生物の寿命を延ばすことが知られている。これに対して、用量の多い場合には、メトホルミンが毒性を示し、マウスの寿命が短くなった。
de Caboたちは、今回の実験で寿命の延びたマウスにおけるメトホルミンの血清レベルが、メトホルミンを投与されている患者に通常見られる血清レベルの約10倍であったことを警告している。また、メトホルミンがヒトの健康寿命と寿命を延ばせるかどうかを解明するには、さらなる研究が必要とされる。
doi:10.1038/ncomms3192
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
注目のハイライト
-
動物学:雌のボノボは団結し、雄に対して優位性を発揮するCommunications Biology
-
量子物理学:通信インフラを活用した長距離量子通信Nature
-
人類学:カルタゴとフェニキアの間に家族的なつながりはほとんどないNature
-
気候変動:温暖化が進む世界で急激な「気温の変化」が増えているNature Communications
-
健康:高血圧の治療は認知症リスクを低減するかもしれないNature Medicine
-
気候:都市のヒートアイランド現象による気温関連死の評価Nature Climate Change