Research Press Release

古生物学:初期のホミニンの手を解明する

Nature

2025年10月16日

人類の古代の近縁種であるパラントロプス・ボイセイ(Paranthropus boisei)に属する150万年前の新たな化石群には、この種に明確に関連付けられる手の骨が含まれており、ホミニン(hominin;ヒト族)の手の進化に関する知見を提供する。Nature にオープンアクセスで掲載される化石の分析によると、パラントロプス・ボイセイは現代人類に見られる特徴の一部を共有しており、ゴリラのような強力な握力を持ちながらも道具を使用する能力を有していた可能性がある。

約200万年から100万年前にかけて、東アフリカでは最大4種のホミニンの種(パラントロプス・ボイセイ、ホモ・ハビリス〔Homo habilis〕、ホモ・ルドルフェンシス〔Homo rudolfensis〕、およびホモ・エレクトス〔Homo erectus〕)が共存していたと推定される。この時代のホミニンは、道具を何らかの形で使用していたと考えられているが、証拠は限られていた。パラントロプス・ボイセイが道具を製作・使用したかどうかは、明確に同定された手の骨が見つかっていなかったため、議論が分かれていた。

ケニアのトゥルカナ湖(Lake Turkana)付近で発見された、推定約152万年前の部分的なホミニン骨格について、Carrie Mongleら(ストーニーブルック大学〔米国〕)が報告している。KNM-ER 101000と命名されたこの標本の歯と頭蓋骨は、既知のパラントロプス・ボイセイの化石と一致する。著者らは、KNM-ER 101000にはパラントロプス・ボイセイの歯と頭蓋骨に明確に関連付けられる初めての手と足の骨が含まれると報告している。その手は、現代人とアフリカ類人猿の両方の特徴を共有している。例えば、親指と指の長さの比率は、パラントロプス・ボイセイが人間と同様の把持力や器用さを持っていたことを示唆するが、精密なつまみ動作はできなかった可能性がある。一方、パラントロプス・ボイセイの他の手骨は、ゴリラのものに類似しており、登ることに役立つ非常に強い握力を持っていたかもしれない。

これらの発見を総合すると、パラントロプス・ボイセイはある程度の道具製作・使用能力を有していた可能性があり、強力な握力は手作業による食物加工(例えば、食べにくい植物の消化できない部分を取り除く剥ぎ取りなど)を容易にしたと考えられる。「このパラントロプス・ボイセイの手のあらゆる特徴は、葉の茂った植物や道具、岩、枝を握る強力な能力を指し示しており、既知の人類化石の中で唯一無二の特性を有している」と、同時掲載されるNews & Views記事においてTracy KivellおよびSamar Syedaは一致して述べている。

Mongle, C.S., Orr, C.M., Tocheri, M.W. et al. New fossils reveal the hand of Paranthropus boisei. Nature (2025). https://doi.org/10.1038/s41586-025-09594-8
 

News & Views: First known fossil hand of the hominin Paranthropus boisei
https://www.nature.com/articles/d41586-025-03129-x

doi:10.1038/s41586-025-09594-8

「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。

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