Research Press Release

生物学:微小重力は卵子の受精と初期胚発生を阻害する

Communications Biology

2026年3月27日

ヒト、マウス、およびブタの細胞を用いた研究によると、模擬低重力(微小重力)環境は、精子の誘導、卵子の受精、および初期胚の発生に悪影響を及ぼすことを報告する論文が、オープンアクセスジャーナルCommunications Biology に掲載される。この発見は、微小重力下における哺乳類の生殖に関する潜在的な課題のいくつかを明らかにしている。

月や火星への有人ミッション(いずれも低重力環境である)が今後10年以内に計画されている。微小重力がヒトの男性ホルモンレベルやマウスの幹細胞の分化に影響を与えることは以前から示されていたが、生殖細胞の挙動や初期胚発生への影響については依然として不明な点が多い。

Nicole McPhersonら(アデレード大学〔オーストラリア〕)は、クリノスタット(Clinostat)と呼ばれる連続回転装置を用いて生成した模擬微小重力下と、標準的な地球重力下において、ヒト、マウス、およびブタの精子が子宮頸部を模した細いチャンネルを通過する際の挙動を比較した。著者らは、微小重力条件下では、標準的な地球重力下と比較して、チャンネルを通過できるヒトの精子の数が有意に減少したことを発見した。ただし、両条件下での精子の全体的な運動能力には差がなかった。しかし、発育中の卵子から分泌され、精子の誘導を助け、通常10マイクロモル濃度で存在するホルモンであるプロゲステロンを100マイクロモル濃度でシステムに添加すると、精子の機能は標準的な地球重力下で見られるレベルまで部分的に回復した。マウスおよびブタの精子も、模擬微小重力下ではチャンネル内を通過する能力が低下したが、ブタの精子の運動効率には影響が見られなかった。

著者らがマウスおよびブタの細胞における受精成功率および胚の発生を比較したところ、微小重力に4時間曝露した後、標準的な地球重力下での同実験と比較して、マウスの卵子の受精成功率が30%低下したことが判明した。さらに、微小重力に4時間曝露した後、標準的な地球重力下と比較して、胚盤胞期まで発育したブタの胚の数が減少した。

これらの知見を総合すると、哺乳類の生殖過程は模擬微小重力下でも進行し得るものの、こうした環境条件によって悪影響を受けることが示唆される。著者らは、微小重力下で受精および発生した胚が持続的な妊娠につながるかどうかは依然として不明であると指摘し、今後の研究では宇宙における人間および動物の長期的な生殖の持続可能性を評価すべきであると提言している。

Lyons, H.E., Nikitaras, V., Arman, B.M. et al. Simulated microgravity alters sperm navigation, fertilization and embryo development in mammals. Commun Biol 9, 401 (2026). https://doi.org/10.1038/s42003-026-09734-4
 

doi:10.1038/s42003-026-09734-4

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