工学:乾燥地域における炭素貯留の新たな解決策
Nature
2026年3月26日
地下への炭素貯留プロセスにおいて水を再利用することで、水資源が限られている地域でも炭素貯留が可能になるかもしれない。外部からの水源を必要としない炭素貯留のパイロットプログラムを報告する論文が、Nature にオープンアクセスで掲載される。
炭素回収・貯留(CCS:Carbon capture and storage)は、大気中の炭素を除去し、地下に恒久的に隔離するための技術である。従来、これは不透水性の岩盤の下に高圧の二酸化炭素(CO2)を注入することで行われてきた。こうした不透水性の岩盤がない地域では、二酸化炭素を水に溶解させ、鉱化と呼ばれる地球化学反応を通じて岩石に取り込むことができる。しかし、この過程を大規模に適用するには、大量の水が必要となる。
Eric Oelkersら(アイスランド大学〔アイスランド〕)は、鉱物由来の炭素回収・貯留において、外部からの水を必要としないパイロットプロジェクトを発表した。プロジェクトの実施場所は、サウジアラビア西部であり、この地域には大量の二酸化炭素を排出する石油精製所が存在するため、炭素貯留技術の必要性が強調されている。この地域の下層には、2100万~3000万年前の透水性のある火山岩が分布しており、鉱物化なしでは炭素を吸収できない。この技術では、最初の注入地点から排出された余剰水をその後の注入に再利用する循環システムを採用しており、二酸化炭素を含んだ水は2つの井戸の間で1年強にわたり継続的に循環される。著者らは、約70%の二酸化炭素が10か月以内に岩石に取り込まれたと報告しており、将来の炭素貯留技術としての実現可能性を実証している。
この手法は、既存のプロセスを応用することで、地球内部への炭素貯留に必要な水量を削減し、拡張性を確保している。著者らは、この技術が水資源の乏しい乾燥地域において特に有用である可能性を示唆している。
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- Article
- Open access
- Published: 25 March 2026
Oelkers, E.H., Arkadakskiy, S., Ahmed, Z. et al. CO2 subsurface mineral storage by its co-injection with recirculating water. Nature 651, 954–958 (2026). https://doi.org/10.1038/s41586-026-10130-5
News & Views: Pilot project paves way to storing CO2 underground as minerals in arid countries
https://www.nature.com/articles/d41586-026-00635-4
doi:10.1038/s41586-026-10130-5
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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