気候:海と大気の相互作用が2023年の北大西洋熱波をもたらした
Nature
2025年6月5日
2023年に発生した北大西洋の極端な温暖化は、海洋と大気の熱交換によって引き起こされたことを報告する論文が、Nature にオープンアクセスで掲載される。この研究結果は、この熱波の要因は今後も続く可能性が高く、このような熱波の深刻さは将来的に悪化するかもしれないことを示している。
海洋熱波は、生態系にダメージを与え、人間活動に影響を与える異常な暖かさが持続する期間である。2023年の北大西洋海洋熱波は夏季に発生し、ヨーロッパ全域で猛暑、暴風雨、および洪水を特徴とし、その年の世界平均気温の記録的な上昇に貢献した。しかし、この2023年の海洋熱波の要因はまだ不明である。
Matthew Englandら(ニュー・サウス・ウェールズ大学〔オーストラリア〕)は、海洋熱波の要因を探るため、一連のモデルと海洋観測を行った。その結果、海洋熱波の原動力となりうる海洋内の熱の移動よりも、大気と海洋の浅い混合層との間の熱の移動が、極端な温暖化の原因であることがわかった。著者らは、異常に弱い風によって海洋の成層構造が浅くなり、北大西洋表層の急激な加熱が促進されたと提案している。また、いくつかの場所では、平均を上回る太陽放射も温暖化に寄与したかもしれないという。中緯度のこれらの場所のいくつかは、主要航路と一致しており、著者らは、雲の減少と太陽放射の増加に関連している硫酸塩排出の減少が、そこで局所的な役割を果たした可能性を提案している。
著者らは、ここ数十年にわたり浅い海洋層の傾向が観測されており、今後も続くと予測されていることから、北大西洋の熱波の深刻さが悪化するかもしれないと指摘している。
- Article
- Open access
- Published: 04 June 2025
England, M.H., Li, Z., Huguenin, M.F. et al. Drivers of the extreme North Atlantic marine heatwave during 2023. Nature (2025). https://doi.org/10.1038/s41586-025-08903-5
doi:10.1038/s41586-025-08903-5
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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