生物学:イッカクの牙の秘密
Nature Communications
2026年8月19日
イッカク(narwhal)の牙の内部に隠された構造が、この牙がなぜこれほど真っすぐな状態を保てるのかを明らかにしたことを報告する論文が、オープンアクセスジャーナルNature Communications に掲載される。この知見は、牙の特徴的な左巻き螺旋(らせん)が、微視的スケールの互いに逆向きの螺旋構造に由来する可能性を示唆している。
イッカクの牙は、特徴的な左巻き螺旋を維持しながら、長さが2メートルを超えることもある、突き出た真っすぐな歯である。イッカクの牙は、自然界で知られる唯一の真っすぐな牙であり、歴史をつうじてさまざまな文化を魅了してきた。これまでの研究では、この形状が牙の内部組織の構成と関連している可能性が示唆されていたが、肉眼的スケールの螺旋構造が牙の微視的な構成要素に反映されているかどうかは不明のままであった。
Henrik Birkedalら(オーフス大学〔デンマーク〕)は、複数の画像解析技術を組み合わせ、複数のスケールにわたるイッカクの牙の構造を解析した。これらの観察結果から、大きなスケールの螺旋構造は、微視的レベルの石灰化したコラーゲン(牙の構成要素)の配列によって形成されることが示された。これらのコラーゲン細繊維は、おもに牙の長手方向に沿って配列していた。一方で、細繊維の配向にはわずかだが一貫した変化があり、2つの互いに逆向きの螺旋構造を形成している。具体的には、外側のセメント質(牙を覆う薄い層)には左巻き螺旋が、内側の象牙質(内部の層)には右巻き螺旋が見られる。著者らは、これらの互いに逆向きの螺旋構造が、イッカクの牙が特徴的な左巻き螺旋を維持しながら真っすぐに成長することを可能にしている可能性を示唆している。
発育過程において牙がどのように形成されるかを解明するには、さらなる研究が必要である。一方で、これらの知見は、生物において、微視的な構造パターンがより大きなスケールの特定の機能をどのように生み出し得るかについて、新たな手がかりをもたらす。
- Article
- Open access
- Published: 18 August 2026
Rodriguez-Palomo, A., Vibe, P.A.S., Athanasiadou, D. et al. The narwhal tusk assembles its macroscopic helix from building blocks with opposing twists. Nat Commun 17, 8098 (2026). https://doi.org/10.1038/s41467-026-75689-z
doi:10.1038/s41467-026-75689-z
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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