Research Press Release

疫学:B.1.1.7変異株の死亡リスクは従来の新型コロナウイルスよりも高い

Nature

2021年3月15日

英国で最初に見つかった重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)のB.1.1.7変異株は、他の変異株よりも死亡リスクが高いと考えられることを明らかにした論文が、Nature に掲載される。この研究知見は、2020年9月〜2021年2月の英国におけるコミュニティー規模の検査の結果(200万件以上)と1万7000例以上の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)死亡症例の分析に基づいており、今後のSARS-CoV-2のお庵でミック(世界的大流行)とそれを抑制するための取り組みに影響を及ぼす可能性がある。

B.1.1.7変異株は2020年9月に英国で初めて検出され、現在では世界の多くの国に感染が拡大している。B.1.1.7の感染力は既存の変異株よりも強いことが以前の研究で示されたが、COVID-19の死亡率への影響は分かっていなかった。

今回、Nicholas Daviesたちは、2020年9月1日〜2021年2月14日の英国におけるコミュニティー規模のSARS-CoV-2検査での陽性判定(224万5263件)とCOVID-19死亡症例(452例)のデータベースを分析した。陽性判定のうち114万6534件(51%)については、B.1.1.7変異株かどうかの判定が行われた。B.1.1.7変異株は、スパイク遺伝子(S遺伝子)に変異があるため、特定のSARS-CoV-2診断検査がS遺伝子では陰性になる。この現象は、SGTF(spike gene target failure)と呼ばれる。Daviesたちは、死亡症例(4945例)のデータを用いて、年齢、性別、民族性などのいくつかの因子で補正した死亡リスクを推定し、SGTFを認める検体を提出した者の死亡リスクが他の既存の変異株に感染した者より55%高かったことを明らかにした。これは、55~69歳の男性が陽性判定後28日間に死亡する絶対リスクが、0.6%から0.9%に増加したことに相当する。Daviesたちは、血中に存在する他のSARS-CoV-2系統の中にも、検査でSGTFとなるものがある可能性を指摘している。そのため、Daviesたちは、モデル化アプローチを用いて別の変異株による誤分類の可能性を補正した上で、B.1.1.7変異株関連の死亡リスクが61%高いと推定した。

doi:10.1038/s41586-021-03426-1

「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。

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