量子コンピューティング:高精度な98量子ビットコンピューター
Nature
2026年6月18日
高い精度で動作し、従来のコンピューターでは再現できない動作を実現する98量子ビットの量子コンピューターを報告する論文が、Nature にオープンアクセスで掲載される。この実証実験は、この種の量子コンピューターの拡張性の可能性を明らかにしているものの、この技術をさらに大規模な量子システムに応用できるかどうかについては、依然として課題が残されている。
量子コンピューターは、従来の計算能力を上回るためには、多数の量子ビット(qubit、情報の単位)を必要とする。しかし、現在の技術では、精度と性能を維持しつつ、使用される量子ビットの数を増やすことに苦戦している。
Anthony Ransfordら(クオンティニュアム〔米国〕)は、「Helios」と名づけられた新しい98量子ビットのイオントラップ型量子プロセッサー(trapped-ion quantum processor)について報告している。イオントラップ型プロセッサーでは、荷電原子(この場合はバリウムイオン)が電磁場中に保持され、量子ビットとして機能し、ゲートと呼ばれる論理演算を実行する。98量子ビットを超える量子コンピューターは存在するものの、これほどの規模に達したイオントラップ型コンピューターはこれまでなかった。イオントラップ型量子コンピューターは、ほかのプラットフォームよりも高い精度を持つことが示されており、著者らは2量子ビットゲートにおいて平均99.921%の忠実度(fidelity)を報告している。ベンチマークテストでは、Heliosが計算速度とエネルギー効率の両面で従来の計算手法を上回ることが示された。以前のバージョンと比較した性能向上のそのほかの指標としては、ゲートエラーの減少、メモリエラーの低減、および回路実行時間の短縮があげられる。
著者らは、Heliosシステムの能力と限界を正確に理解するためには、さらなる検証が必要であると指摘している。同時掲載される「News & Views」記事の著者であるCrystal Noelは、システムの継続的な技術的課題に取り組むことが、「イオントラップ型アーキテクチャー(構造)が大規模量子計算の次の段階に到達するために不可欠となる」と述べている。
- Article
- Open access
- Published: 17 June 2026
Ransford, A., Allman, M.S., Arkinstall, J. et al. A 98-qubit trapped-ion quantum computer with all-to-all connectivity. Nature (2026). https://doi.org/10.1038/s41586-026-10676-4
News & Views: Reconfigurable quantum computer juggles 98 qubits
https://www.nature.com/articles/d41586-026-01702-6
doi:10.1038/s41586-026-10676-4
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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