物理学:巨大なショウジョウバエの精子はいかに尾のもつれを防ぐのか
Nature Physics
2026年6月23日
雄のショウジョウバエ(fruit flies)が産生する巨大な精子は、体内で高密度に整列した、きわめて動的な「生きた物質」として組織化されており、狭い空間内で数千もの細胞が結び目を作ったり尾がもつれたりすることを防いでいることを報告する論文が、Nature Physics に掲載される。この発見は、精子間の集合的な物理的相互作用によって、精子が運動性を保っていることを示唆している。
一部の動物は、体サイズに比べてきわめて長い精子を生成する。成虫の雄のキイロショウジョウバエ(Drosophila melanogaster)の体長はおよそ2ミリメートルで、ゴマ粒ほどの大きさである。しかし、個々のショウジョウバエの精子の長さは雄の体長とほぼ同じで、その大部分は鞭毛(尾部)が占めている。こうした精子は数千個が、雄・雌双方の生殖器系内のきわめて狭い空間に貯蔵されている。その一つが、交尾前に精子を貯蔵する雄の器官である精嚢(seminal vesicle;せいのう)で、その大きさは約200マイクロメートルである。このような極端な精子の大きさの進化的理由については広く研究されてきたものの、これらの長く活動的な細胞を詰め込み、貯蔵するうえでの物理的な課題については、あまりわかっていない。
Michael Shelleyら(フラットアイアン研究所〔米国〕)は、ショウジョウバエの精子が精嚢内でどのように組織化され、移動するかを調べた。高解像度の3次元電子顕微鏡法および生細胞蛍光イメージングを用いて、精子が高密度に詰め込まれ、数十マイクロメートルにわたって互いに整列していることを発見した。詰め込まれた精子は、静止しているわけではなく、器官全体に及ぶ集団的な流動を生み出し、それが数時間にわたって持続する。単離されたショウジョウバエの精子はほとんど動かないが、高密度に集合した集団内では、個々の精子が共通の配向方向に沿って近傍の精子の間を滑るように移動することで、速く移動することができた。
著者らは、モデル化をつうじて、これらの精子が尾部に沿って小さな屈曲波を発生させ、反対方向に移動する近くの尾部に押すことで移動していると示唆している。さらに、著者らは、この力が、雄および雌の生殖器官の両方において、精子の比較的長い尾がもつれるのを防ぐのに役立っていると指摘している。
- Article
- Published: 22 June 2026
Imran Alsous, J., Chakrabarti, B., Palmer, B. et al. The physical consequences of sperm gigantism. Nat. Phys. (2026). https://doi.org/10.1038/s41567-026-03305-4
doi:10.1038/s41567-026-03305-4
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