人工知能:患者管理のための医療用AIモデル
Nature
2026年6月18日
診断から治療方針の決定にいたるまで、患者管理の複数の段階を支援できる2つの独立したAI(Artificial intelligence;人工知能)モデルを報告する論文が、今週のNature に掲載される。MIRA(Medical Intelligence for Reasoning and Action)およびGoogleのAMIE(Articulate Medical Intelligence Explorer)と名づけられたこれらのシステムは、医師と同等、あるいはそれを上回る性能を発揮し、対話型AIツールが疾患管理を支援する可能性を示している。
大規模言語モデル(LLM:Large language models)は、臨床応用において有望な進展を示しているが、多くの場合、限定的に定義されたタスクに特化している。一方、患者の臨床管理には、病歴の精査、適切な検査の実施、正確な診断、治療法の立案(薬物療法および外科的治療の両方)、そして複数回の受診にわたる経過観察など、多面的な対応が求められる。もしAIエージェントがこうした一連のタスクを実行し、効果的な管理判断を下せるようになれば、医師の日常業務を支援するとともに、世界の一部の地域における医師不足の緩和に貢献する可能性がある。Nature に掲載される2つの論文は、自律型医療AIエージェントの能力における進展を報告している。
Jakob Katherら(ハイデルベルク大学病院〔ドイツ〕)は、独立した電子カルテシステム内の患者データにアクセス可能なAIモデル「MIRA」についてオープンアクセスで報告している。このモデルは、救急部門における500件以上の臨床症例から得られた実世界データを用いて評価された。MIRAは、臨床記録から抽出された既往歴と一致する応答を行う患者AIエージェントとのチャットをつうじて情報を収集する。MIRAは、8万5000以上の選択肢から診断検査を指示し、結果を解釈し、薬剤の処方、処置のスケジュール設定、および入院の手配を含む治療計画を策定できる。その診断精度は、平均87.8%を達成し、これは専門分野の異なる6人の医師パネルによる78.1%を上回る。著者らは、精度をさらに向上させ、実世界での研究において汎化能力を確立するためには、今後の研究が必要であると結論づけている。
Mike Schaekermannら(Google Research〔米国〕)、臨床管理と対話に最適化されたLLMベースのシステム「AMIE」について報告している。このモデルは、複数の受診記録にわたって継続的な推論を行い、疾患の進行や治療への反応を把握することができる。AMIEは、Geminiを用いて患者から得られた情報を分析し、その出力を関連性が高く最新の臨床実践ガイドラインや薬剤フォーミュラリー(承認済みで臨床的に推奨される薬剤の一覧)と整合させる。仮想臨床試験において、AMIEは、英国NICE(National Institute for Health and Care Excellence;国立医療技術評価機構)のガイダンスおよびBMJ Best Practiceガイドラインを反映するように設計された、5つの医療専門分野にわたる100の複数回受診ケースシナリオにおいて、21名のかかりつけ医と比較された。AMIEは、管理推論能力において実在の医師と同等の性能を示したほか、治療や検査の正確性、臨床ガイドラインとの整合性、およびそれらのガイドラインにもとづいた管理計画の策定においては、医師を上回る結果となった。新たに導入された薬剤処方推論のベンチマーク(RxQA)において、AMIEは難症例において医師を上回る成績を示した。著者らは、AMIEが臨床ケアに活用できる状態になるにはさらなる研究が必要であると指摘しつつも、本研究が疾患管理において医師を支援する対話型AIツールの活用に向けた一歩であると結論づけている。
- Article
- Open access
- Published: 17 June 2026
Ferber, D., Hilgers, L., Höper, C. et al. Towards autonomous medical artificial intelligence agents. Nature (2026). https://doi.org/10.1038/s41586-026-10675-5
- Article
- Published: 17 June 2026
Liévin, V., Palepu, A., Weng, WH. et al. Towards Conversational AI for Disease Management. Nature (2026). https://doi.org/10.1038/s41586-026-10764-5
doi:10.1038/s41586-026-10675-5
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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