ヒトの進化:遠く離れたポリネシアでのアメリカ先住民との接触
Nature
2020年7月9日
先史時代のアメリカ大陸とポリネシア東部の間の航海に関する新たな証拠を示した論文が、今週、Nature で発表される。今回の研究では、現代人と古代人の遺伝的データの解析が行われ、ポリネシアの歴史を明らかにする手掛かりがもたらされた。この解析結果は、太平洋上の島々におけるヒト集団の形成においてアメリカ先住民が果たした役割に関する長年の議論に決着をつける上で役立つ。
先史時代にポリネシア人とアメリカ先住民が接触していた可能性については、これまでのゲノム研究で得られた結論が矛盾していたため、盛んに議論が交わされている。今回、Andrés Moreno-Estrada、Alexander Ioannidisたちの研究チームは、ポリネシア人とアメリカ先住民(計800人以上)のゲノムを解析し、西暦1200年頃にアメリカ先住民とポリネシア人が交雑したと推論した。ポリネシア東部では、ポリネシア人と、現在のコロンビア沿岸部の先住民に非常に近縁なアメリカ先住民との接触が1回だけあった。しかし、これまでのいくつかの研究で示唆されてきたように、最初の接触点はイースター島ではなかった。
これまでのゲノム研究は、イースター島での接触に着目していた。これは、イースター島がヒトが居住するポリネシア諸島の中で南米に最も近かったことによる。しかし、今回の研究は、ポリネシア東部の諸島の1つ(例えば、マルキーズ諸島)で最初の接触があったとするノルウェー人探検家の故トール・ヘイエルダールの学説を裏付けている(ヘイエルダールは、1947年に大型木製いかだのコンティキ号に乗って、ペルーからポリネシアへの漂流航海を行った)。今回の研究で得られた知見は、接触事象が、これまで考えられていた時期よりも前に起こり、ポリネシアの複数の島に広がったことを示している。このことから、アメリカ先住民は、ヨーロッパ人が到着する5世紀以上前からポリネシアに遺伝的影響と文化的影響を及ぼしていたことが示唆される。
doi:10.1038/s41586-020-2487-2
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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