環境:ヨーロッパ全域で粉塵汚染が増加している
Nature
2026年7月16日
2012年から2021年にかけて、ヨーロッパの大部分で粉塵(ダスト)濃度が一貫して上昇し、特に南ヨーロッパや地中海地域で比較的大きな上昇が見られたことを報告する論文が、Nature にオープンアクセスで掲載される。この傾向は、大気循環の変化や北アフリカにおける長期的な砂漠化と関連している可能性がある。著者らは、粉塵汚染の悪化が、大気質や公衆衛生にますます悪影響を及ぼす恐れがあると警告している。
鉱物由来の砂漠の粉塵は、大気中の粒子状物質の主要な構成要素であり、喘息や死亡のリスク上昇などをつうじて健康に悪影響を及ぼす可能性がある。ヨーロッパの一部地域では、粉塵の発生増加が報告されているものの、この傾向が大陸全体に及んでいるかどうか、また、その要因については不明であった。
Petros Vasilakos、Imad El-Haddad、Kaspar Daellenbachら(パウル・シェラー研究所〔スイス〕)は、ヨーロッパ全域の103か所の農村部および都市部観測地点から、粉塵に関連する金属(アルミニウム、チタン、ケイ素、カルシウム、および鉄)の日別測定値約1万8500件を収集し、これを用いて2012年から2021年までの日別粉塵濃度の機械学習モデルを構築した。その結果、調査期間中にヨーロッパの大部分で粉塵濃度が上昇しており、特にイタリア、アドリア海、およびエーゲ海上空で最も大きな上昇が見られた。2021年までに、南ヨーロッパでは、輸送された粉塵が世界保健機関(WHO:World Health Organization)の年間PM10(直径10マイクロメートル以下の粒子状物質〔particulate matter〕)ガイドライン値の31%を占めるようになった。この地域では、住民が年間平均約46回の粉塵発生を経験しており、これらの事象時の粉塵レベルは、日別死亡率の約0.67%の上昇と関連していた。
著者らは、粉塵汚染事象の頻度は増加していないものの、南ヨーロッパの一部地域ではその深刻度が増していることを明らかにした。アルプスの氷河コアの分析からも、産業革命以前と比較して粉塵の堆積量が約110%増加していることが示されており、これは、北アフリカの乾燥化の進行や大気循環パターンの変化に関連する、粉塵の長期的な増加を示唆している。
著者らは、粉塵汚染が公衆衛生および大気質目標にとって、今後ますます大きな課題となる可能性があると結論づけている。ただし、北東ヨーロッパ、バルカン半島、およびスカンジナビアなど、ヨーロッパの一部地域では観測データの範囲が限られていた点にも言及している。
シュプリンガーネイチャーは、国連の持続可能な開発目標(SDGs;Sustainable Development Goals)、および当社のジャーナルや書籍で出版された関連情報やエビデンスの認知度を高めることに尽力しています。本プレスリリースで紹介する研究は、SDG 13(気候変動に具体的な対策を)に関連しています。詳細は、「SDGs and Springer Nature press releases」をご覧ください。
- Article
- Open access
- Published: 15 July 2026
Vasilakos, P.N., Upadhyay, A., Manousakas, M.I. et al. Rising dust pollution across Europe in a changing climate. Nature 655, 647–654 (2026). https://doi.org/10.1038/s41586-026-10743-w
doi:10.1038/s41586-026-10743-w
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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