物理学:トビヘビの飛行を安定させる波状運動
Nature Physics
2020年6月30日
トビヘビが滑空する際、波状運動が飛行を安定させることを示したモデル化研究についての論文が、Nature Physics に掲載される。
水中や、凸凹のある地面、砂の上を、波のように動いて前進する動物は多い。トビヘビ(Chrysopelea)は、飛行できることが知られる唯一の肢のない脊椎動物で、滑空する際に波状運動を用いる。この過程において、トビヘビの体の形は、水平方向の波と鉛直方向の波が全身を移動することで連続的に変化する。
今回、Isaac Yeatonたちの研究チームは、高速度モーションキャプチャーを用いてトビヘビの滑空を撮影し、波状運動がトビヘビの運動にどのように影響を及ぼすかを分析した。その結果、滑空行動の際に鉛直方向の波が存在することが見いだされた。これは、トビヘビが空中で水平方向運動以上に波状運動を使っていることを示唆している。次にYeatonたちは、波状運動がある場合とない場合のトビヘビの飛行をシミュレートするコンピューターモデルを構築した。解剖学的に正確にモデル化したトビヘビは、波状運動がない場合、空中で縦揺れと横揺れを起こし、滑空距離が短かった。一方、波状運動を加えると、シミュレーションの大半で安定した滑空が見られた。これは、トビヘビでは波状運動が飛行の安定性を高めている可能性を示している。この結果は、波状運動を前進のみに使う他の動物とは対照的である。
Yeatonたちは、生物に着想を得た、波状運動を使って滑空できる飛行ロボットの設計に今回の知見が役立つ可能性があると示唆している。
doi:10.1038/s41567-020-0935-4
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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