地球上の生命は太陽のスーパーフレアのおかげ?
Nature Geoscience
2016年5月24日
活発で若い太陽が、初期の地球で生命に必要な原料と気候を提供する助けになったとの報告が、今週のオンライン版に掲載される。
窒素(N)は地球上の生命を形成する土台に不可欠な成分だが、元々は年代の若い地球大気にのみ窒素分子(N2)の形(化学的には全く反応性を示さない)で存在したと考えられている。大気中の窒素分子を引き離して、生物がより利用しやすい形に再結合するためにはエネルギーの高い過程が必要であった。
太陽に似た若い星の上の嵐で、大量の高エネルギー粒子が爆発的に放出される様子を望遠鏡で観測した結果に基づいて、Vladimir Airapetianたちは、同じように嵐を起こしていた若い太陽がしばしば高エネルギー粒子を爆発的に地球に向けて放出し、このいわゆるスーパーフレアが初期地球大気の化学的性質変化の引き金となったという仮説を述べている。彼らは、そのような荷電粒子の雲は地球に頻繁に(おそらく一日に一回以上)衝突していたと見積もっている。スーパーフレアと地球との間の相互作用の数値シミュレーションは、スーパーフレアが極間に大きな隙間を形成することで地球磁場に擾乱を引き起こし、それによって高エネルギー粒子が大気に侵入する経路を作ったことを示唆している。
著者たちは、その後高エネルギー太陽粒子は窒素分子を含む地球大気の成分と相互作用して、窒化酸素(N2O)とシアン化水素(HCN)を生成したことを発見した。彼らは、HCNがアミノ酸などの生物分子を構築する窒素源を提供し、強力な温室効果ガスであるN2Oが地球表面の温度を液体の水と初期生命の発生を助ける程度まで高くしたことを示唆している。このようなことは、太陽がその荒々しい性質にもかかわらず今日よりも30%暗かった時期に起きた。
関連するNews & Views記事で、Ramses Ramirezは、提案した過程は初期火星の環境にも影響を与えた可能性があり、「極めて年代の若い、太陽に似た恒星の周りを回っている太陽系外惑星の気候と生命体の可能性に対しても意味を持つ可能性がある」と述べている。
doi:10.1038/ngeo2719
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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