Research Press Release
火星の塩水の痕跡
Nature Geoscience
2015年9月29日
火星では、斜面上で季節的に現れては消える謎の縞に塩水の流れと矛盾しない塩が存在するという報告が、今週のオンライン版に掲載される。このような「循環する斜面の線」と呼ばれる表面の特徴は、塩水活動により形成されるという仮説はあったものの、これまで直接的な証拠はなかった。
高分解能画像は、典型的には5メートル以下の細い特徴を持つ循環する斜面の線が、温暖な季節に斜面に現れて長くなり、寒冷な季節には消えることを示していた。循環する斜面の線が活動的な表面の温度範囲は、塩分を含んだ流体の水がその形成に関わっている可能性を示唆している。しかしながら、宇宙船の分光データは線よりも粗い分解能であり、通常は数ピクセルのデータにわたって平均される組成分析では、塩も水も検出されなかった。
Lujendra Ojhaたちは、NASAのマーズルコネッサンス軌道船に搭載されたCRISM測定器で得られた分光データから、循環する斜面の線が存在する位置を分析した。CRISMデータの個々のピクセルから分光学的情報を抽出する手法を開発して調べた全ての場所で得られた分光スペクトルは、水から沈殿した水和した塩の鉱物の存在と矛盾しないものであった。対照的に、周囲の地域の背景スペクトルには塩に対する分光学的信号は存在しなかった。
この発見は、火星の斜面に一時的に現れる縞と塩水の流れとの間に関連性があることを強く示唆している。
doi:10.1038/ngeo2546
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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