遺伝学:北西部に最後に生息したネアンデルタール人の遺伝的多様性
Nature
2026年6月25日
Genetics: The genetic diversity of the last northwestern Neanderthals
北西ヨーロッパで最後に生き残ったネアンデルタール人の一部は、ほかのネアンデルタール人や初期の人類とは隔てられつつも、互いに密接につながった大規模な集団を形成して暮らしていた可能性があることを報告する論文が、Nature にオープンアクセスで掲載される。5万2500年前より新しい時期に生きた、少なくとも11人の異なる個体を含むこれらのネアンデルタール人は、遺伝的に多様であることが判明しており、遺伝的劣化が絶滅のおもな原因であったとする従来の見方に疑問を投げかけている。
ネアンデルタール人の遺伝学的研究は、DNAの保存状態の悪さによって制約を受けている。そのため、ネアンデルタール人の社会的・遺伝的構造や、さらに約4万年前の絶滅要因については、依然として十分には解明されていない。
Alba Bossoms Mesaら(マックス・プランク進化人類学研究所〔ドイツ〕)は、ベルギーのマース川流域(Meuse Basin;中旧石器時代の遺跡が特に豊富に存在する地域)の7か所と、フランスの2か所から出土した27体のネアンデルタール人の遺骸からDNAの配列を解析した。ベルギーのゴイエ洞窟(Goyet cave)から出土した4万5000年前のネアンデルタール人の標本は、これまでに解読された中で5例目となる高カバレッジ(高精度)のネアンデルタール人ゲノムを提供した。著者らは、また、保存状態がそれほど良くない19体の遺骸からも、ゲノム全体の核DNAデータを取得した。これらのデータから、多くの個体が近親関係にないことが判明し、彼らが大規模で密接につながった集団で生活していたことを示唆している。さらに、ほかのネアンデルタール人集団とは異なり、近親交配の証拠はほとんど見られず、遺伝的多様性の低下が絶滅のおもな原因ではなかったことを示唆している。
遺伝学的分析によると、これらのネアンデルタール人は約5万4000年前にほかの既知のネアンデルタール人との共通祖先から分岐しており、ほかのネアンデルタール人集団よりも互いに近縁であったと報告されている。本研究の対象となったネアンデルタール人は、初期の現代人と最大500世代にわたり共存していたと考えられているが、著者らは現代人のゲノムによる遺伝子浸透(introgression)は確認できなかった。
これらの発見は、絶滅直前の後期ネアンデルタール人の遺伝的多様性を理解するための基準点となるものである。これらのデータを総合すると、ネアンデルタール人の遺伝的多様性は従来考えられていたよりも高く、後期ネアンデルタール人がどのように生きたか、そしてどのように滅びたかに関する理解に新たな視点をもたらす。
- Article
- Open access
- Published: 24 June 2026
Bossoms Mesa, A., Essel, E., Peyrégne, S. et al. Genetic diversity of late Neanderthals in northwestern Europe. Nature (2026). https://doi.org/10.1038/s41586-026-10625-1
News & Views: Genomic insights into the population dynamics and demise of Neanderthals
https://www.nature.com/articles/d41586-026-01704-4
doi: 10.1038/s41586-026-10625-1
注目の論文
-
10月27日
生態学:海での生活に適応した装甲を持つ両生類Nature Ecology & Evolution
-
10月23日
天文学:ゴッホの『星月夜』、7月の夜空に着想かScientific Reports
-
10月22日
生態学:沿岸保護における塩性湿地の役割Nature
-
10月16日
考古学:シャニダール洞窟のネアンデルタール人遺骸に致命的な槍傷の可能性Scientific Reports
-
10月16日
気候変動:造礁サンゴ種のほぼ半数で相対的な絶滅リスクが高いNature
-
10月15日
古生物学:飛べなかったジュラ紀の鳥が初期の生態的多様性を明らかにするNature
