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気候変動:クジラの糞が温暖化に関連する有毒藻類ブルームの大発生を記録する

Nature

2025年7月10日

Climate change: Whale faeces record warming-related toxic algal blooms

Nature

食物連鎖に流入する藻類ブルームによる毒素の増加と海水温の上昇との関連性をホッキョククジラ(bowhead whale)の糞の分析から検出されたことを報告する論文が、今週のNature にオープンアクセスで掲載される。この発見は、北極圏の約20年にわたるデータに基づくもので、海洋の温暖化がどのように藻類の毒素濃度を増加させ、先住民のコミュニティーの食糧安全保障を脅かすかについての理解を深めるかもしれない。

過去20年間、北極圏は海洋温暖化と海氷の減少に見舞われ、海洋環境が変化してきた。このような変化は、野生生物や人間に有害な影響を与える毒素を産生する有害藻類ブルームの大発生に適した生育条件を提供しているかもしれない。しかし、これらの有害毒素への曝露が北極圏でどのように変化しているかについてのデータは限られている。

北極海の食物網における藻類による毒素の存在について、Kathi Lefebvreら(米国海洋大気庁海洋漁業局〔米国〕)によって、19年間に収集されたボーフォート海(Beaufort Sea)の205頭のホッキョククジラの腸サンプル中の毒素の詳細な定量化を通して評価された。藻類の毒素濃度は、海水温の変化とともに、開水面積(氷のない海域の広さ)、風速、および気圧と強い相関関係があることがわかった。毒素濃度が高いほど、海水温の上昇や海氷面積の減少に関連していた。この発見は、より多くの毒素が食物連鎖に入り込み、海洋動物や、海洋資源を食料とする人間に影響を及ぼしているかもしれないことを示唆している、と著者らは結論づけている。著者らは、食糧資源に依存する北極圏のコミュニティーを保護するために、海洋動物が有害藻類毒性ブルームにさらされていないか、継続的にモニタリングすることを推奨している。

シュプリンガーネイチャーは、国連の持続可能な開発目標(SDGs;Sustainable Development Goals)、および当社のジャーナルや書籍で出版された関連情報やエビデンスの認知度を高めることに尽力しています。本プレスリリースで紹介する研究は、SDG 13(気候変動に具体的な対策を)およびSDG 14(海の豊かさを守ろう)に関連しています。詳細は、「SDGs and Springer Nature press releases」をご覧ください。

Lefebvre, K.A., Charapata, P., Stimmelmayr, R. et al. Bowhead whale faeces link increasing algal toxins in the Arctic to ocean warming. Nature (2025). https://doi.org/10.1038/s41586-025-09230-5

 

doi: 10.1038/s41586-025-09230-5

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