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  • 地球の内核と磁場形成に新たな議論!

    地球の中心部は、「固体の鉄合金からなる内核」を「液体の鉄合金からなる外核」が覆った構造をしており、その物性が磁場形成やプレート運動などのカギを握っている。東京工業大学理学院地球惑星科学系の太田健二講師は、外核に相当する157万気圧、4500Kもの超高圧高温環境を作り出し、鉄の電気伝導度を測定することに成功した。実測というインパクトとともに、「約7億年前」と導き出された内核形成の時期が、新たな議論を呼んでいる。

    2016年9月号

  • 免疫から逃れるがん特有のゲノム異常発見

    がんゲノムの研究における第一人者、小川誠司教授は、血液がんをはじめ、さまざまながんの仕組みを解き明かしてきた。今回、片岡圭亮特定助教とともに行ったがん症例の大規模解析により、がんが免疫から逃れる仕組みの1つを解明した。この知見を利用すれば、免疫チェックポイント阻害剤の効果が予測できるのではないかと考えられ、注目を集めている。

    2016年8月号

  • 次世代電池を牽引する、全固体電池開発

    広く普及しているリチウムイオン電池の3倍以上の出力特性を持つ、全固体(型)セラミックス電池が開発された。開発に成功したのは、東京工業大学物質理工学院の菅野了次教授、トヨタ自動車の加藤祐樹博士らの研究グループで、リチウムイオンの伝導率がこれまでの2倍という過去最高の性能を誇る固体電解質の発見によって実現した。次世代の自動車開発、スマートグリッド拡大などにつながる有力な蓄電デバイスとして期待される。成果は今年1月に創刊したNature Energy の4月号に発表された。菅野教授、筆頭著者の加藤博士に研究の意義、今後の展望などについて伺った。

    2016年7月号

  • 水から高効率で酸素と電子を生む鉄触媒

    地球温暖化やエネルギー問題を背景に、太陽の光エネルギーを化学エネルギーへと変換する人工光合成技術の開発が注目を集めている。その1つに「水を酸化して酸素、プロトン、電子を得る反応」がある。このような中、分子科学研究所、正岡重行グループは高い効率で酸素を発生させる鉄触媒を作り、Nature に報告した。筆頭著者である総合研究大学院大学博士課程3年の岡村将也さん(2016年4月より名古屋大学大学院特任助教)に掲載までの経緯を伺った。

    2016年6月号

  • カメムシの腸内共生細菌は進化の途上

    昆虫の体内に棲みつき、昆虫にとって欠くことのできない役割を果たしている共生細菌。自然界で別々に暮らしていた昆虫と細菌が、長い進化の過程を経て、互いに不可欠な存在になったのだ。しかし、そのような関係に至った仕組みはまだ分かっていない。この謎に迫る重要な発見がNature Microbiology の創刊号で報告された。自然界で現在進行中の共生進化の過程を捉えることに、日本の研究チームが成功したのだ。

    2016年5月号

  • ボトムアップ法が拓くナノカーボン科学の新局面

    1985年のフラーレン発見以来、ナノチューブやグラフェンなどのいわゆるナノカーボン類は社会に多大なインパクトをもたらしてきた。ナノカーボン類は現在、レーザー照射などでグラファイトを蒸発・凝結させるといった「トップダウン型」の手法で合成されることがほとんどだが、近年、ナノカーボン構造を有機合成の手法で構築する「ボトムアップ型合成」の研究が盛んになっており、この手法に関する総説がNature Reviews Materials 創刊号に掲載された。著者である名古屋大学の伊丹健一郎教授、瀬川泰知特任准教授、伊藤英人講師のお三方に、有機合成で作ることの意義と現状、今後の展望について伺った。

    2016年4月号

  • 植物の体内時計、組織ごとに異なる役割!

    地球の生物は、地球の自転に応じた24時間周期の昼夜変化に同調して生きている。例えばヒトでは、体温、睡眠、ホルモン分泌などが24時間のリズムを刻んでいる。このような概日リズムは、脳の 視交叉上核にある体内時計が機能することで刻まれ、光や温度変化のない条件でも認められる。一方、ヒトのような中枢神経系を持たない植物にも、日長や季節に応じた花芽の形成、細胞の伸長などが見られる。京都大学生命科学研究科の遠藤求准教授らは、シロイヌナズナの体内時計を組織ごとに破壊し、維管束では日長、葉肉では温度というように情報を別々に処理していることを突き止めた。

    2016年3月号

  • 老化を制御し、予防する

    年齢とともに、体の生理機能が低下する「老化」。私たちはなぜ老化するのか。老化は、どのような仕組みで制御されているのか。その謎を追い続けてきた今井眞一郎教授は、制御の中核となる「サーチュイン遺伝子」の機能を発見し、さらに、脳をコントロールセンターとする組織間ネットワークの働きを研究してきた。「老化の仕組みを科学的に解明することは、病気を効率的に予防する方法を見いだせる最善の道」と今井教授は語る。

    2016年1月号

  • わずか6種のタンパク質で染色体凝縮を再現

    1つのヒト細胞に含まれるゲノムDNAは、全長約2mに達する。分裂の過程で複製したDNAを正確に分配するには、規則正しく折りたたんで染色体へと「凝縮」させる必要がある。理化学研究所の平野達也主任研究員は、この過程のカギとなるタンパク質複合体「コンデンシン」を1997年に発見。さらに2015年、わずか6種の精製タンパク質から試験管内で染色体を作る実験系の開発にも成功した。

    2015年12月号

  • 「プログラム合成」で、究極の構造多様性を征服する

    ベンゼン環は、有機化学の象徴ともいうべき構造であり、天然・人工を問わず多くの化合物の基本単位だ。このベンゼン環に各種の置換基を導入することで、多様な性質を引き出すことができ、例えば液晶材料・有機EL・医薬品などの高付加価値化合物がここから生み出される。このため、ベンゼン環上の望みの位置に必要な置換基を導入する手法の開発は、化学の黎明期から変わらぬ重要なテーマだ。このほど名古屋大学の伊丹健一郎教授、山口潤一郎准教授らのグループは、ベンゼン環の6つの炭素に、全て異なる芳香環が導入された「ヘキサアリールベンゼン」の合成に成功した。その意義、研究の経緯などを、両博士に伺った。

    2015年11月号

  • 小胞体も核も選択的オートファジーの対象だった!

    次々と出る良好な実験データ─「うまくいきすぎて、怖いくらいでした」と、持田 啓佑・大学院生は研究を振り返る。オートファジーは、細胞内の大規模分解システム。世界中で激しい研究競争が繰り広げられているこの分野で、細胞の小胞体に加え、核のオートファジーの仕組みをも明らかにすることに、わずか2年ほどで成功したのだ。

    2015年10月号

  • 葉の気孔から発生の謎を解く

    2015年、自然科学の分野で実績を残してきた女性科学者に与えられる猿橋賞を受賞した鳥居啓子名古屋大学客員教授。米国ワシントン大学教授であり、米国で最も革新的な15人の植物学者の1人として、ハワード・ヒューズ医学研究所(HHMI)正研究員にも選ばれる。植物の気孔が形成される仕組みを解明し、シグナル伝達による植物の発生の制御へと、研究フィールドを広げ続けている。

    2015年9月号

  • 攻めか、守りか、棋士の直観を脳科学で解明

    プロの世界では、一瞬の気の迷いが命取りになることが少なくない。求められるのは、どのような状況下でも、瞬時に正しい決断を行う人並み外れた能力だ。理化学研究所 脳科学総合研究センター 認知機能表現研究チームの田中啓治チームリーダーらは、訓練を重ねたプロ棋士が直観的に「次の手」を決めたり、「攻めるか守るかの戦略」を決めるときの神経基盤の解明を進めてきた。10年にわたる脳活動の測定により、これまでに知られていなかった回路を突き止めることに成功した。

    2015年8月号

  • 細胞が重力でつぶれない仕組みを発見

    体が扁平になる奇妙なメダカの変異体が発見された。どうして扁平になるのか — 10年余りにわたる探索の結果、ようやくその謎が解かれた。普通のメダカの細胞には、重力に押しつぶされないような仕組みが働いていたのだ。その仕組みが存在しなかったら、ヒトはもちろん地球上の生物の大部分は、今の形をしていなかったかもしれない。

    2015年7月号

  • エンセラダスに生命の萌芽を見出す

    ガリレオやカッシーニ、火星ローバーなどによる惑星探査が進み、地球と似た環境がかつて存在した火星、液体の現存する木星の衛星エウロパ、土星のタイタンなどで、生命存在の可能性が議論されてきた。一方で、見向きもされなかった土星の小さな衛星エンセラダスが、にわかに注目を集めている。原始的な微生物であれば、生息可能であることが分かってきたからだ。東京大学大学院理学系研究科の関根康人准教授は、国際的な研究チームの一員として実験室での再現実験を担当し、微生物を育める環境の存在を実証することに成功した。

    2015年6月号

  • 生物非対称性の研究もセンター運営も、皆で手を携えて

    「心臓はなぜ体の左側にあるのか」といった左右非対称性の研究で、その分野を開拓しリードしてきた発生生物学者・濱田博司氏。2015年4月、理化学研究所 多細胞システム形成研究センターの新センター長に就任した。左右非対称性の仕組み解明を目指す研究者としての取り組みと、新センター長としての抱負について伺った。

    2015年5月号

  • リン酸化反応を多角的に解析し、シグナル伝達系の全貌に迫る!

    人体には200種以上の細胞が存在するとされ、細胞独自の形態や運動性、極性などは、細胞内外のさまざまな情報の授受と伝達により獲得・決定されている。この過程はシグナル伝達と呼ばれ、生命活動の基盤をなす一方、異常を生じると、がんや循環器疾患、神経・精神疾患の原因となる。名古屋大学大学院医学研究科・神経情報薬理学講座の貝淵弘三教授は、35年にわたり、リン酸化反応を介したシグナル伝達系の解析を進めている。

    2015年4月号

  • 脳の中に記憶の正体を探す

    「脳の研究にとって、こんなにワクワクする時代はないと思います」。脳の高次機能の研究に長年取り組み、特に記憶のメカニズムの解明で世界を牽引してきた東京大学大学院医学系研究科の宮下保司教授は目を輝かせる。脳科学者にとって、テクノロジーのブレークスルーが起きているからだという。30年間の研究を振り返りつつ、宮下教授は興味の尽きない研究の将来を語る。

    2015年3月号

  • 網膜内部に血管が入り込まない仕組みを、分子レベルで解明!

    生体には血管網が張り巡らされており、血管を介してさまざまな物質が供給される。血管新生はがんなどで異常に活性化されるため、新生メカニズムの研究は世界中で盛んに行われている。一方で、血管が入り込まない組織(軟骨や発生期の網膜など)があることも知られているが、その排除メカニズム解明は全く進んでいなかった。このほど、久保田義顕・慶應義塾大学医学部准教授らは、血管網の可視化研究から、思いがけない仕組みによって血管が排除されていることを突き止めた。

    2015年2月号

  • 誰もが“バイオインフォマティシャン”の時代

    インターネット上の情報やツールを使った遺伝子検索や配列解析など、生命科学分野では研究者や医療従事者によるビッグデータの活用が重要になってきた。そのときに役立つのが、バイオインフォマティクス(生物情報学)の基礎知識。だが日本では教育が遅れ気味だ。バイオインフォマティクス分野の草分け的存在の4人に、バイオインフォマティシャンの仕事や役割、この分野の展望を語ってもらった。

    2015年1月号