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脳の中に記憶の正体を探す

宮下 保司

Nature ダイジェスト Vol. 12 No. 3 | doi : 10.1038/ndigest.2015.150316

「脳の研究にとって、こんなにワクワクする時代はないと思います」。脳の高次機能の研究に長年取り組み、特に記憶のメカニズムの解明で世界を牽引してきた東京大学大学院医学系研究科の宮下保司教授は目を輝かせる。脳科学者にとって、テクノロジーのブレークスルーが起きているからだという。30年間の研究を振り返りつつ、宮下教授は興味の尽きない研究の将来を語る。

図1:視覚の刺激は、網膜から脳の高次領域に向かう「ボトムアップ信号」になり、一次視覚野を通り、側頭葉に記憶として貯蔵される。記憶を想起するときには、その逆の向きの「トップダウン信号」が流れる。

–– Nature ダイジェスト:脳科学のシンポジウムを2014年末に東京大学で開催されましたね。

宮下:視覚、記憶、思考に関する研究が、脳の高次機能の解明を推し進めてきたといえるでしょう。その分野の研究者を集めてシンポジウムを開いたのです。そのうちの1人は、場所の記憶を担当するグリッド細胞の研究で有名なエドワード・モーザー博士だったのですが、今回、ノーベル生理学・医学賞の授賞式と重なり、こちらを直前キャンセルされました(笑)。ビデオで講演いただきましたけど。

そのモーザー博士の他、脳内の顔認識ネットワークを同定したドリス・ツァオ博士、数字を扱う脳の仕組みを明らかにしたスタニスラス・ドゥアンヌ博士、視覚認識の主観性解明に貢献したウィリアム・ニューサム博士などがシンポジウムで最新の研究成果を語ってくれました。この方々が理論や概念上のブレークスルーを担った人たちだとしたら、テクノロジー上のブレークスルーを代表する講演者は、カール・ダイセロス博士でした。光遺伝学の開発者です。

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Nature ダイジェスト Online edition: ISSN 2424-0702 Print edition: ISSN 2189-7778

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