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葉の気孔から発生の謎を解く

鳥居 啓子

Nature ダイジェスト Vol. 12 No. 9 | doi : 10.1038/ndigest.2015.150930

2015年、自然科学の分野で実績を残してきた女性科学者に与えられる猿橋賞を受賞した鳥居啓子名古屋大学客員教授。米国ワシントン大学教授であり、米国で最も革新的な15人の植物学者の1人として、ハワード・ヒューズ医学研究所(HHMI)正研究員にも選ばれる。植物の気孔が形成される仕組みを解明し、シグナル伝達による植物の発生の制御へと、研究フィールドを広げ続けている。

–– Natureダイジェスト:気孔に興味を持たれたきっかけは?

鳥居:気孔は葉の表面にある小さい穴で、唇のような形の孔辺細胞2つが1セットになり、開いたり閉じたりします。呼吸や光合成のためのガス交換や、植物体内の水分量調節などの重要な働きをしていて、その開閉メカニズムは古くから知られていましたが、発生学的な研究はあまりなされていませんでした。

「変異体を作ると、自分の想像力では思いつかないようなヒントが得られる」(鳥居教授)。
マスター遺伝子のMUTE遺伝子を壊すと、メリステモイド細胞の非対称分裂が停止しなくなり、バラの花のような形の細胞が生じる(b)。
転写因子SCREAMを亢進させてマスター遺伝子を過剰に活性化させると、表皮細胞が全て気孔になる(c)。
erecta、erl1、erl2遺伝子の三重変異体を作ると、気孔の塊ができる(d)。
(a)は野生型。(共焦点レーザー走査顕微鏡写真) | 拡大する

–– それがなぜ、発生の研究に?

偶然の出合いという感じでした。ワシントン大学で初めて自分のラボを持った2000年頃のことです。自分らしい研究テーマを打ちだそうと、以前、自分がクローニングした1シロイヌナズナの遺伝子(ERECTA)を用いて、植物の生長の研究をしようと思いました。ERECTAは、細胞のシグナル伝達を行う受容体を作る遺伝子です。その働きを詳しく調べるためにいろいろな変異体を作製してみたのですが、びっくりしました。気孔だらけの葉ができてしまったのです。通常、気孔は互いにある程度の間隔を空けて分布しているものです。それが、気孔の塊さえできていました。

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Nature ダイジェスト Online edition: ISSN 2424-0702 Print edition: ISSN 2189-7778

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