Nature ハイライト

分子生物学:出芽酵母のイントロンは飢餓における細胞生存を調節する

Nature 565, 7741

真核生物のほとんどの遺伝子は、ノンコーディングの介在塩基配列であるイントロンを含み、イントロンはスプライシングにより一次転写産物から取り除かれる。イントロンには、宿主遺伝子の発現を制御する調節配列を含むものや、宿主mRNAの翻訳を制御する核内低分子RNAの遺伝子を含むものがある。これらの例から、イントロンのごく一部について機能的役割が示されているが、真核生物遺伝子におけるイントロンの普遍的な性質については説明されていない。S Elelaたちは今回、出芽酵母(Saccharomyces cerevisiae)のイントロンの大半が、飢餓条件下での細胞生存力に必須であることを示している。彼らは、各クローンが1つか2つのイントロンを欠失した酵母クローンのライブラリーを作製し、イントロンを1つ欠失すると、宿主遺伝子のアイデンティティーや機能は変わらないにもかかわらず、栄養枯渇に対する酵母株の耐性が低下することを明らかにした。スプライシングを受けていないイントロンは一次転写産物内で特有の構造をとり、翻訳や呼吸に関連する一般的な一連の遺伝子を阻害することで、栄養の枯渇に対する耐性を促進した。このようなイントロンの影響は、栄養の濃度に応じてリボソーム生合成を抑制するTOR経路やPKA経路によって仲介される。このような飢餓状態への細胞の適応の新しい機構は、真核生物遺伝子にイントロンが普遍的に分布していることに対する非常に興味深い説明だが、イントロンが他の真核生物でも同様の機能を持つかどうかはまだ不明である。

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