Nature ハイライト

分子生物学:酵母の切り出されたイントロンがTOR増殖シグナル伝達を調節する

Nature 565, 7741

40年前にスプライシングが発見されて以来、切り出されたイントロンそのものには何も機能が報告されておらず、イントロンは切り出されて数秒で分解されると考えられていた。しかし今回D Bartelたちは、出芽酵母(Saccharomyces cerevisiae)の300のイントロンのうち34は、細胞が対数増殖期から増殖飽和期へと移行するとき、あるいは細胞が他のストレスにさらされてTOR(増殖シグナル伝達を統合する重要な因子)の阻害が長引いたときに、そのまま直鎖状RNAとして安定化されるという驚くべき発見を報告している。このイントロンの安定化には、ゲノム中の起源や塩基配列は関係なく、ラリアット(投げ縄)構造の分枝部位と3′スプライス部位との距離が短いことが必要である。安定化したイントロンは触媒作用後のスプライソソームの構成要素に結合したまま残り、不明の分子経路を介してTORC1の阻害と生化学的に関連している。イントロンはこれまで、エキソンを連結するときに生じる活性のない副産物と考えられていたが、今回の研究によって、酵母のTOR増殖シグナル伝達ネットワークの制御に重要な生物学的機能を持っていることが明らかになった。

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