Nature ハイライト

Cover Story:形成途中の地球:地球の組成を作り上げた蒸発過程

Nature 549, 7673

天体衝突のコンピューターシミュレーション画像。衝突天体(衝突領域中心部の暗灰色)が標的天体(明灰色)へと集積する際、衝突領域内の岩石の一部は溶融(黄色~白色)または蒸発(赤色)する。
天体衝突のコンピューターシミュレーション画像。衝突天体(衝突領域中心部の暗灰色)が標的天体(明灰色)へと集積する際、衝突領域内の岩石の一部は溶融(黄色~白色)または蒸発(赤色)する。 | 拡大する

Credit: Philip J. Carter

地球は、無数の微惑星の衝突を通して形成された。現在では、こうした構成要素の代表が隕石であり、炭素質コンドライトはそうした隕石の1つで、その元素組成は初期の太陽系の化学的性質を反映していると考えられている。そのため、地球の化学的組成はこうした隕石と似ているはずであり、実際多くの点で似ている。しかし、地球は、鉛、亜鉛、インジウムなどの揮発性が中程度の元素が極めて枯渇している。地球の形成過程でこうした元素が溶岩から蒸発したとすればこの枯渇を説明できる可能性がある。今回A NorrisとB Woodは、このアイデアをさらに調べ、以前の提案に見られた矛盾の一部を解決している。彼らは、制御された条件下の炉で玄武岩質の岩石を溶融させ、地球とその前駆天体の集積時に生じたと思われる溶融過程を調べた。その結果、揮発性元素の枯渇パターンは、初期地球の部分溶融および蒸発と一致することが分かった。著者たちは、こうした事象が、溶融した小さな前駆天体上で、あるいは月の形成につながった地球との激しい衝突のような高エネルギー衝突の際に起きたと示唆している。表紙は、原始地球と近傍の微惑星の衝突の例である。こうした天体では、衝突とアルミニウム26の崩壊によって加熱されて、揮発性元素が脱ガスし、厚い大気が形成されるが、最終的には太陽風によって星間空間に運び去られ、地球の最終組成から揮発性元素が除かれる。関連する論文でR Hinたちは、地球、火星、いくつかの小惑星のマグネシウム同位体比を測定して、蒸発というアイデアをさらに裏付ける証拠を得ている。

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