Nature ハイライト

考古:小さな人が住んでいた島

Nature 431, 7012

インドネシアのフローレス島にはわずか1万8,000年前まで、これまで知られていなかった新種の人類が住んでいたことが発見され、これは過去何万年間かの人類の多様性が予想よりはるかに大きかったことを物語っている。この人類の部分骨格はLiang Buaという名の洞窟で見つかったもので、研究者をもっとも驚かせたのは、完全に成人でありながら身長がわずか1 mしかなく、頭骨もグレープフルーツほどの大きさだったことだ。 この遺体化石を今週号に報告したP Brownたち(この化石の考古学および年代測定についてのM Morwoodたちの報告も掲載されている)の考えでは、この新種の化石人類は、原人類にあたる(ただし標準サイズの)ホモ・エレクトゥスの子孫だという。ホモ・サピエンスもホモ・エレクトゥスから進化したと考えられている。ホモ・エレクトゥスはおそらく200万年も前に、アフリカを出てアジアへ進みインドネシアまで分布を広げていった。今回Liang Bua洞窟で見つかった遺体化石は、数十万年前にフローレス島にホモ・エレクトゥスの集団がしばらく隔離されて、小型な体へと進化したものとみられる。 この小人のような新種の化石人類は、最近まで「ロスト・ワールド」のようだったフローレス島の風変わりな絶滅動物相にまさしくぴったりである。フローレス島は、他の地域では絶滅に追いやられてしまった古代のさまざまな動物たちの「安寧の地」となり、動物の多くは体が小型化したり大型化したりした。その中には、ステゴドン類(原始的な化石ゾウ類)の小型種や、今と同じ大きさのコモドオオトカゲ、また現生種よりも大きいオオトカゲ類もあった。 この化石人類はフローレス島で孤立して暮らしていたわけだが、同じころ、標準サイズのホモ・エレクトゥスの残留集団もまだ近くのジャワ島で暮らしていた可能性がある。また、いずれにしても同じころにホモ・サピエンスがこの地域全体に住み着いていた。ニューギニアに現生人類が住み始めたのは少なくとも5万年前で、オーストラリアにも同じころ住み始めている。以上のことを考えると、こんな疑問がわいてくる。ここ数万年間の人類の多様性について、いったいどんな驚きをもたらしてくれる遺跡がまだ地球の片隅で発見されるのを待っているのだろう。

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