Nature ハイライト

Cover Story:極限化学:希少なローレンシウム原子を使った実験で明らかになった、周期表中の相対論的領域

Nature 520, 7546

現代になって行われたメンデレーエフの元素周期表の改訂で最も大きかったのは、1944年にグレン・T・シーボーグが行ったもので、ランタノイドの下にアクチノイド(原子番号89~103)という一連の元素が新たに配置されたことである。今回、永目諭一郎(日本原子力研究開発機構)たちは、その最後に位置する103番元素のローレンシウムについて、原子の基本的な特性の1つである第一イオン化ポテンシャルを初めて測定したことを報告している。ローレンシウム原子は、重イオン加速器を用いて「一度に1個」しか作ることができないため、その特性を実験で調べた例はほとんどない。著者たちは、イオン化ポテンシャル測定に必要な元素の数を数十億個から数千個に減らすことに成功した。そうして得られた結果は最新の理論計算結果と一致しており、ローレンシウムの最後の価電子は、全てのアクチノイド元素、さらには周期表上の1族元素を除く全元素の中で、最も弱く束縛された電子であることが明らかになった。この特徴は、原子が極めて重いために相対論的効果が重要な役割を果たしている周期表の領域で見られていて、103番元素がアクチノイド系列の最後に位置することを裏付けている。

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