超重元素:103番元素ローレンシウムの第一イオン化ポテンシャル測定
Nature 520, 7546 doi: 10.1038/nature14342
元素の化学的性質は、主として最外殻の電子配置に支配される。相対論効果は、すでに周期表第6周期の重元素の電子構造に影響を与えているが、その効果はアクチノイドを含む第7周期において劇的に大きくなり、基底状態の電子配置にも影響を及ぼす。相対論効果によって原子のs軌道とp1/2軌道は安定化するのに対し、p3/2軌道、d軌道、f軌道は不安定化するため、このような重い元素の基底状態の電子配置は同族の軽元素と異なる場合がある。第一イオン化ポテンシャル(IP1)は、中性原子から価電子を1個取り去るのに必要なエネルギーであり、最外殻電子配置を反映する。IP1を実験的に精度よく正確に決定することによって、価電子の束縛エネルギー、ひいては相対論効果による電子軌道の安定化に関する情報が得られる。しかし、最も重い領域の元素はシングルアトム(one atom at a time)レベルでしか得ることができないため、そうした測定はこれまで行うことができなかった。今回我々は、最も重いアクチノイド元素であるローレンシウム(Lr、原子番号103)のIP1を実験的に測定し、その測定値が4.96+0.08−0.07 eVであることを報告する。LrのIP1測定は、質量分離器に高効率表面電離イオン源と放射性同位体検出システムを組み合わせ、256Lr(半減期27秒)を対象として行った。得られたIP1測定値は、今回、最先端の相対論的計算を用いて予想した理論値4.963(15) eVとよく一致している。本研究は、理論計算に対して信頼できる基準を提示するとともに、超重元素(すなわち超アクチノイド元素)のシングルアトムレベルでのIP1測定に向けて道を開くものである。

