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Cover Story:昆虫を襲うトンボ要撃機:トンボは予測によって飛行中の獲物を捕らえる

Nature 517, 7534

モーションキャプチャー用の再帰性反射マーカーを装着したトンボ(合成画像)。
モーションキャプチャー用の再帰性反射マーカーを装着したトンボ(合成画像)。 | 拡大する

Credit: Igor Siwanowicz, Leonardo Lab, Janelia Research Campus, HHMI

表紙は、再帰性反射マーカーを装着したトンボがハエを捕らえる様子を示している。霊長類などの脊椎動物は、内部モデルを使って自分の動きを制御しその結果を予測しているが、無脊椎動物の動きは、おおむね反射によっていると考えられてきた。しかし今回、A Leonardoたちは、トンボが飛行中の獲物を捕らえる際の頭部と胴体の動きをモーションキャプチャーの手法によって追跡し、昆虫ではこれまで知られていなかった行動の複雑性を実証した。トンボの頭部は、獲物に下から近づく際に標的を自動的に追尾しているが、胴体の方は獲物の飛んでいく経路と一致するように巧みに動いて、獲物との距離を短縮している。トンボが獲物に向かうこのような動きは、獲物の動きの変化のみに応答して生じる反応的なものではなく、反応と位置予測の両方が使われているらしい。このような予測をしているとすれば、獲物の動きとトンボ自身の胴体の動きがうまく説明され、これは内部モデルによる予測形成と一致する。昆虫の神経系は実験で扱いやすく、トンボは耐荷重能も高いので、このような系を使えば運動制御の一般原理を機構から詳細に解明することが可能になりそうだ。

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